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BI海外事情・状況

【シリーズ序論】現代BI論を築いた12名の知性

当サイトのメインカテゴリー「BI海外事情・状況」における論考の柱として、本シリーズを始めます。

ベーシックインカム(BI)は、単なる「現金給付の仕組み」ではありません。
それは、人が「生存および労働の義務・責任」という従来の規範から解放されたとき、社会にどのような創造性と公正性が生まれるかを問う、壮大な知の実験でもあります。

本シリーズでは、次節で紹介する、グローバル社会から厳選した海外の12名の知性と、彼らの主著とその主張を取り上げ、2050年という近未来の視座からその思想を確認していきます。

紹介する12名の研究者と当シリーズ全13回の構成を以下に示します。
各回では、理論の解説のみならず、その人物が活動した国や時代の空気感、そして現代日本への示唆を論じていきます。

焦点となる知性(国・活動時期)柱となる主要著書(日本語訳題など)探究の核心(本シリーズの注目点)
01F.V.パリース(ベルギー:1990s〜)『ベーシック・インカムの哲学』「リアルな自由」:誰にも支配されない生存の権利。
02G.スタンディング(英:2000s〜)『ベーシックインカムへの道』「プレカリアート」:不安定層を救うコモンズの再建。
03R.ブレグマン(オランダ:2010s〜)『隷属なき道』「理想の実現」:過去の成功例が示す圧倒的実効性。
04A.ヤン(米:2020s〜)『普通の人のための戦い』「AIとの共生」:自動化社会の富を市民へ戻す自由配当。
05A.マッケイ(英:2000s〜)『Basic Income and Gender』「ジェンダー」:ケア労働の再評価と家父長制からの脱却。
06Y.バルファキス(ギリシャ:2010s〜)『クソったれ資本主義が倒れた後の世界』「脱・金融資本」:アルゴリズムが富む時代の経済民主化。
07C.マレー(米:2000s〜)『In Our Hands』「自己決定」:右派の視点から描く行政スリム化と尊厳。
08K.ワイドクイスト(米:2000s〜)『Independence, Propertylessness, and BI』「心理的解放」:資産を持たざる者の隷属を終わらせる。
09T.フィッツパトリック(英:2000s〜)『Freedom and Security』「エコロジー」:脱成長時代、環境と生存権の融合。
10G.ヴェルナー(独:2000s〜2020s)『自由な社会への処方箋』「経営哲学」:消費税財源で労働を自己実現へ変える。
11J.ファーガソン(米・南ア:2010s〜)『Give a Man a Fish』「分配の正義」:グローバルサウスに見る権利の形。
12S.サンテンス(米:2010s〜現在)『Let There Be Money』「エバンジェリズム」:SNS時代のBI普及と実践的データ。
13【総括】13の知性が描く未来シリーズ全体の俯瞰海外の議論を統合し、日本が選ぶべき道筋を提示する。

本シリーズで取り上げる12名は、単に著名な研究者というだけではありません。
それぞれが「異なる時代背景」と「異なる地域の課題」を背負い、BIを武器に既存の社会システムへ挑んだ思想家たちです。

1990年代に「正義」としてのBIを確立したパリース、
2000年代に「労働の崩壊」を予見したスタンディング、
そして2010年代以降、AIや環境危機、SNS時代のうねりの中でBIを「実践」へと変えたブレグマンやヤン、サンテンス。

1990年代から現在に至るまで、彼らの思想を辿ることは、資本主義が抱えてきた「格差」「性差」「環境」「テクノロジー」という巨大な宿題を、一つひとつ解き明かしていくプロセスでもあります。
地域ごとの「特殊・特別な事情」が、BIという一つの解に集約されていくダイナミズムを、本シリーズを通じて感じ取っていくことができればと考えています。

本シリーズは、単なる研究レポートの羅列ではありません。
毎回の論考において、各論者が提示する思想を深くインストールすると同時に、その思想が内包する「可能性と限界」を構造的にも、社会的にも考察・検証していきます。

当サイトが認識の前提とするのは、「これら優れた思想が、現時点では未だ世界のどの国においても、完全な制度として、あるいは一部分でも明確な制度としても、システム化はされていない」という事実です。

私たち当サイトは、この「未実装」の要因を探るべく、論理的な切り口と具体的な社会課題の両面から、以下の6つの視座を持って考察を進めます。

理論自体の欠落と不十分性:論理的な飛躍や、経済的持続性、インセンティブの再設計といった要素が、各思想において見落とされていないか。
人間理解と現実との乖離:理想とする人間像や社会像が、実際の人間心理や多様な行動原理と乖離していないか。
実装を阻む構造的な壁:既存の政治・経済システム、あるいは文化的・倫理的な「労働の規範」とどう衝突し、なぜそれを乗り越えられないのか。

「右」と「左」の合流とその限界:保守派とリベラルが同じBIを目指しながら、なぜ社会の主流派になり得ないのか。その政治的障壁を考察します。
パラダイムシフトの可能性:従来の労働中心型から「分配中心型」経済への移行が、私たちの倫理観とどう衝突し、何が限界点となるのかを考察します。
「欧州」vs「北米」の比較:各地の試行錯誤を辿り、グローバルな経済システムにおける構造的な限界を浮かび上がらせます。

回を追うごとに、先行する論者の視点と新たな視点を比較させ、論考の重層性を高めていきます。
最終回(第13回)では、それら全ての知を統合・集約し、2050年の日本が参照すべき論点を総括・眺望します。

第1回:現代BI論の「父」が語る真の自由(フィリップ・ヴァン・パリース)「自由とは、ただ法律で許されていることではない。それを実行する手段を実際に持っていることだ」。
現代BI論の最高峰とも言われる彼の論理が持つ可能性と、一方で彼が直面し続けている理論的・現実的限界に迫ります。

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