1. HOME
  2. NOTE
  3. BI・BP構想以前の全世代対象社会保障システム改革2020年考察シリーズから
NOTE

BI・BP構想以前の全世代対象社会保障システム改革2020年考察シリーズから

はじめに

廃止済みサイト・https://2050society.com に2020年3月投稿の「2030年の社会システム改革シリーズ」の3記事を、2023年3月に、2021年1月1日に開設した、https://basicpension.jpに転載。
それを、当サイトに、重複などを整理して、1記事にまとめたものです。

旧記事は、内容の重複を避けるため、順次、非公開化/リダイレクト/canonical設定などにより整理し、検索エンジン上でも重複を残さない運用を行います。

本稿は、2020年第1四半期の初筆記事です。
この時は、まだベーシックインカムへの認識もほとんどなく、単純に、その時点での社会保障制度をめぐる社会的・政治的・行政的ニュースや議論に対する疑問・疑念から、廃止したサイトで、思うところを述べていたのです。
したがい、当サイトの前身である、ベーシックペンション論のサイトに、敢えて、基軸となる、基軸とすべき考察と位置付けて転載した経緯があります。
その時の議論の状況と、今日の状況には、ほとんど変化も進歩もないことに、ある意味愕然としています。
それだけに、意を新たにする意味でも、集約することにしました。



この投稿には、ベーシックインカムという用語はまだ見ることはありません。
しかし、以後展開することになるベーシックインカム論のきっかけ、起点になっているものとして、こちらに転載しました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していましたが、当転載記事では、多くは削除しています。
ご了承ください。

 今回は、「社会保障システム改革」をテーマとした1回目。

 政府の掲げる全世代型社会保障制度改革は、単に、高齢者世代と現役世代の受益と負担の不公平感を感じることが多少なりとも抑えられるようにするもの。
 こうした矛盾とそれに対して持つべき基本認識・方針などについて、当ブログで先に、以下のように提起してきた。
◆ 全世代型社会保障改革のあり方:同社会保障検討会議中間報告から考える政治と行政の貧困(1)(2020/1/10)
◆ 全世代型社会保障改革は、生涯型社会保障制度改革(2020/1/11)
◆ 負担者視点ではなく、受益者視点で行うべき全世代社会保障改革(2020/1/14)
◆ 妊娠・出産から始まる生涯年金型社会保障制度へ!(2020/1/17)
※上記記事は、廃止したサイトでの記事であり、リンクできません。記事タイトルのみ提示しました。

 これらをより体系的に、より具体的に、考えつつ整理し、整理しつつ深堀りしていこうというもの。
 いろいろ矛盾や不足が生じることを想定しつつ、取り組むことにしたい。

憲法25条では、
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

と規定している。
 国が取り組むべきとしている「社会保障」「社会福祉」。
「公衆衛生」と聞くと、今問題になっている「新型コロナウイルス感染」問題が反射的に浮かぶ。
 まさに、国が、政府が、行政がどう取り組むかの責任が問われているわけだ。
 しかしここは「社会保障」が対象。

 平成5年の社会保障審議会における報告では、「社会保障」とは、
「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民にすこやかで安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行うもの」
としているという。
「社会福祉」で思い浮かぶのは、障害者福祉や母子家庭への支援、それに生活保護を加える場合もあるかもしれない。
 しかし、保活・待機児童不安や、育児・子育てと仕事の両立の困難さが要因の一つとされ、一向に改善される様相がみられない少子化社会。
 それも、国民の生活の安定が損なわれている状態とみてもよいだろう。
 だが、保育所・子育てに関する行政は、「児童福祉」「児童福祉法」に根拠を置くとされている。
 「福祉」領域の課題とされているわけだ。
 「少子化」が、社会経済システムの持続や発展に支障をきたすものゆえ、あるいは、子どもが次世代社会を維持させていくために必要な人的資源と考えると、個々人の生き方・価値観に委ねて済むことではないのでは・・・。
 すなわち、出産を含めて子育て・保育が、社会で保障すべき課題とすべきともいえる。
 要するに、現状の社会保障、社会福祉の定義や対象自体、再検討・再定義、すなわち改革が必要となる。

社会保障システム改革という大命題を、これからどうまとめ上げていくか。
その時に対象にすべき改革の視点・方針を、雑だが、以下メモしてみた。

1.生涯を対象とする社会保障:国民の生活は、生涯にわたるもの
2.生涯において生活部面での便宜的な世代区分における社会保障
 
1)高齢世代(先行世代) 2)現役世代 3)後継世代
3.それぞれにおける社会保障課題、社会保障行政等の体系化
 
1)社会福祉も医療・公衆衛生も、広義の社会保障に含む
 2)現役世代の雇用・失業・技能訓練等も社会保障領域に
4.社会保障財源改革が不可欠
 
1)社会保険料のみを財源とする社会保障・社会福祉は実際にはない
 2)労働保険も、現役世代と後継世代を支えるゆえ、社会保障の一種
5.社会保障行政改革も絶対不可欠
 
1)社会保障省の創設と保障業務区分別行政組織再編・改革
 2)歳入・歳出官庁の創設を含む財源管理行政改革も

今回は以上までとし、次回から、上記の重点方針を活用して、少し具体的に検討・提案していきたい。


今回は、第2回です。

 安倍内閣の掲げる全世代型社会保障改革の狙いは、現役世代の負担の大きさと、高齢者の受給の大きさ・多さの不公平感を少しでも抑制するため。
 その方法は、主に高齢者の医療費等の負担を現状よりも増やすことや、年金受給開始年齢を遅らせることを可能にすることなど。
 あるいは、高齢者にこれまでよりももっと働いてもらい、年金給付を抑制する、あるいは、そうして現役寿命?を引き伸ばし、現役世代の対象を拡張する手。
 これが全世代型社会保障制度改革などとは、とても言えるものではない。
 では、この現役世代対高齢者の不公平感の戦いは、実際のところどうなのか?
 こと厚生年金保険料や健康保険料の負担額を、過去の高齢者の負担と比較すると大きな格差があることは間違いないと思われる。
 しかし、年金以外の社会保障制度や労働保険制度も加えると、現役世代が受ける給付や一時金は、それなりにある。
 例えば、健康保険料会計を原資とする、出産育児一時金や出産手当金。
 例えば、児童手当。
 手当や一時金という名称になっており、給付される額も十分というわけでは決してないが、現役世代とその子どもに対する給付だ。
 失業時に雇用保険で給付される失業手当も。
 もちろん医療保険は、保険料の負担感も大きく、当然自己負担もあるが、医療給付サービスは高額医療費負担限度額の制度もあり、一応は保障されている。

 そこで、すべての社会保障制度と労働保険制度を統合・再編成することで、現役世代がやる気と安心感と将来への夢を持つことが可能になるのでは、と考える。
 もちろん、これ以上負担が増えないことを前提とするのが理想だが、高福祉高負担でもそれが可能になれば納得できるのではないだろうか。
 ただ、これからは「(社会)福祉」という表現を「(社会)保障」に改める制度改革、システム改革を想定する。
 そのための課題の一つは、手当の年金化、年金と呼ぶに値する手当の額の年金額化である。
 そして、各年金をだれに支給するか、その給付対象体系の構築が大前提となる。

 もちろん、現役世代・高齢世代が負担する保険料等と公費などの財源システムの改革が前提での生涯型社会保障システム改革である。
 しかし今回は、まず、全世代・生涯年金制度の枠組みのみを提起したい。

1.後継世代:新生児から成人を迎える前までの世代の本人受給分
 
1)新生児年金(現状の児童手当を年金化。金額再検討)
 2)児童年金( 同上 )
 3)教育年金(高等教育奨学金的給付。社会人準備。満18歳迄。要件あり)
 4)遺族基礎年金・遺族厚生年金
2.現役世代
 
1)新生児養育年金(満1歳未満の新生児を養育する親権者に給付)
 2)幼児養育年金(小学校未就学児童を養育する親権者に給付)
 3)児童教育年金(中学校卒業までの児童を養育する親権者に給付)
 4)失業年金(失業時年金)
 5)遺族基礎年金・遺族厚生年金
3.高齢世代
 
1)老齢基礎年金
 2)老齢厚生年金

 この「全世代年金受給システム」と呼ぶべきこの制度は、真の意味での「国民皆年金システム」である。
 繰り返すが、社会保険制度と労働保険制度を統合した社会保障制度である。
 これに加えて、広義の社会保障制度の中に組み込まれる社会福祉制度も、再構築が必要になる。
 障害者福祉、母子家庭・父子家庭支援福祉、生活保護なども、同様に福祉型年金システムとして、年金システムの一部に組み込まれることになる。
 なお、この全世代・生涯型年金システムは、マイナンバー(個人番号)カードシステムを基盤とし、個人番号(マイナンバー)を年金基礎番号とする。

 次回、この統合年金制度の前に手を付けておくべき、現状の国民年金制度と厚生年金保険制度の改善・改革について考えてみたい。


 老齢基礎年金部分をなす国民年金と、老齢厚生年金部分の厚生年金。
 昭和61年4月から施行された国民年金・新法で、公的年金制度は、いわゆるこの2階建て方式に移行した。
 昭和36年に導入された旧国民年金制度は、厚生年金保険が対象とした被用者対象の厚生年金保険に対して、例外はあるが一応個人事業主が加入することとなり、国民皆年金制度形式が実現した。
 この2つのステップは、大変意義のあること。
 しかし、被扶養者の専業主婦には保険料負担義務がない。
 パートタイマーで働く主婦が、この被扶養配偶者であり続けるために、限度額を超えないよう就労時間を調整する。
 一方、その限度額を超えて働き、厚生年金保険料を負担している妻が感じる不公平感。
 これまでも問題とされてきているが、ごくまれにその限度額をいじる程度で、抜本的に改革するに至っていない。
 それとは別に、2つの年金制度にまたがる改正として、税理士など士族の個人事業主は、国民年金ではなく厚生年金に加入することとなった。
 これは、当然のことだ。
 私は、士族に限らず、一般の個人事業主はすべて厚生年金に加入する制度に変えるべきと考える。
 実は、公的年金において、定額方式をとる(国民)基礎年金と、報酬に比例する厚生年金という方式を並列することを前提とすると、改革に踏み出せないのだ。
 国民皆年金制度に加入するからには、全員が保険料を負担するのが本筋。
 ところがまったく保険料を負担せず、基礎年金を受け取る(ことができる)専業主婦がいる国民年金制度である限り、永久に年金改革はできないのではないかと思う。

 増加する給付費用に対して、保険料収入増も不可欠。
 これも当然のことで、絶対に実行すべき改革課題だ。
 現状の国民年金の個人事業主や学生の加入者の年齢は、基本、20歳以上60歳未満。
 一方、基本的に雇用され賃金を得る人ならば、(賃金額の条件はあるが)年齢関係なく厚生年金保険に加入。
 これを、18歳以上は収入の有無にかかわらず、全員が厚生年金に加入することにする。
 このうち、まったく収入がない被扶養配偶者の保険料は、収入がある一方の配偶者が負担する。
 現状、所得限度額で保険料負担を免れている賃金収入があれば、その額を問わず、規定に基づいて保険料を負担する。
 雇用されず、家賃収入など不労所得がある人も、その所得に応じて保険料を納付する。
 学生については、現状の学生納付特例などの規定を残せばよいだろう。
 夫婦共働き社会では、実態に合わなくなっている現状の年金制度改革。
 2020年代前半で、改革の議論をぜひとも進めてほしいものだが・・・。

 そこで、定額方式の基礎年金の仕組みをどうするか、が重要な課題になる。
 実は、基礎年金の国民年金は、年金として支給(給付)される年金の半分、2分の1は、国庫で負担している。
 すなわち、国民や企業の年金保険料及び税金で賄われている。
 そのため、厚生年金に統合しても、考え方としては全員に何らかの基準を設定して基礎額を給付する方式を維持するのは可能である。
 全額、報酬に比例する方式に切り替える必要はない。
 ただ、基本的には全所得者が保険料を納付することになるため、年金給付全体では比例報酬部分の構成比が高まることになる。

 今回も、基本的な考え方だけを提起しており、改善・改革の具体的な金額や比率など数字では示していないことを了解頂きたい。
 昭和61年の大改正以降、抜本的な改革がない年金制度。
 進行・深化する超少子高齢化が深刻化させる、社会保障制度における財源問題と世代間問題。
 2030年の大改革を想定すれば、10年以内に方針と具体的な方策を議論・決定し、法制化しなければならない。
 小手先のものではないものにするためには、5年間で方針合意。
 あとの5年間で法律策定と順次移行、2030年に完全移行、という工程が必要になるだろう。
 政治家と官僚にそうした問題意識や使命感・責任感がどれほどあるだろうかか・・・。



本来過去記事の統合集約版は、公開した時期順に当サイトで取りあげるべきでしたが、一瞬、今回のシリーズ記事を対象とすべきかどうか迷ったため、後になってしまいました。
しかし、何度も読み直したところ、やはりこの論考が、原点の一つだった、あるいは、BPだけでなく、シンBI2050の起点だったという思いを強くし、公開することにしました。
そのため、統合集約版のシリーズの通し番号に限って、旧いシリーズ記事順に順序を変更修正・更新しました。
各編の記事内容には、支障ありませんので、もし気になった方がいらっしゃったら、ご理解ください。

今回の記事を起点にして、以下のシリーズ統合集約記事に連なっていきました。