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ベーシックインカムで年金や社会保障はどうなる?制度の変化を考察|社会保障再編統合2021年試案

はじめに

本稿は、WEBサイトhttps://basicpension.jp に、2021年1月30日から同年2月14日までに、7回に亘って掲載した、ベーシックインカム導入時の社会保障制度等関連諸制度の改定・改革に関する考察・提案記事を、1記事にまとめたものです。

上記旧サイトにおいては、当サイトで「シンBI2050」と呼んでいるBI/ベーシックインカムを、「ベーシックペンション」(BP)という名称で論考・論述しています。
また、シンBI2050同様、BPもデジタル通貨方式を提案しており、記事中では、”JBPC”と表現しています。

今回取り上げる7記事においては、ベーシック・ペンションの導入に伴って必要となる種々の社会保障制度の改善・改正・廃止などについて、提案・提示しています。
既に5年経過しており、当時記事中で用いた各種資料の多くが、当時のみ適用可能であり、外部資料へのリンクも同様だったことから、多くを省略・削除して再編集しています。
前後の文脈で、記事内容を類推・ご理解頂ければと思います。



最初に、本シリーズの対象となる制度及び関連法体系についてのガイダンスの意味を持つ記事を配置。
それを基にして、各論を進めていきます。

現在日本で種々提案されているベーシックインカム導入案では、ベーシックインカムの目的・意義の基本的な認識の違い、完全ベーシックインカム導入の困難さからの部分的ベーシックインカム提案などにより、社会保障制度や社会福祉制度をどのように扱うのか、方針・方向性、あるいは蓋然性を示してはいても、具体的な、あるレベルで現実的にイメージできる内容の提案には踏み込んでいない例の方が多いと思われます。
「とにかく現金を配れば、ほぼ目的は達せられる。」
そんな感じで、現状の年金制度等の社会保険制度、雇用保険等の労働保険、そして最も重要な課題である生活保護制度をどうするかにさえも踏み込まず、現状のまま上乗せするか、単に全廃するとか、現状のさまざまな課題・問題は、スルー、ほぼ放任・無責任状態です。

しかし、当サイトが提案するベーシック・ペンション、生活基礎年金制度は、基本的人権に基づく社会保障制度の軸としてものであるため、極力現行の諸制度がどのようになるのか、どのようにすべきかを検討し、提案するように努めています。

そこで先ず、現行の法体系において「社会福祉」法制の枠組みで制定・運用されており、ベーシック・ペンション導入時に、直接・間接的に改定もしくは廃止すべきと考える制度を、規定されている法律名で抽出し、以下の6区分に分類しました。

1)社会保険関連法
2)労働保険関連法
3)児童手当関連法
4)福祉六法
5)税制関連法
6)その他


これらの法律を調べるにあたって、「福祉法」と名が付く法律で検索したところ<福祉法令>リストを示すコンテンツを見ることができ、以下の論考において活用しています。

私は、現状用いられ、浸透している「福祉」の概念は、ベーシック・ペンションの導入で、極力狭めてはどうかと考えています。
その前提は、反対に「社会保障」の概念と対象領域を広げることにあります。
憲法で規定する基本的人権に基づき、自律的な人は社会保障で広くカバーし、障害などで相当程度社会的支援なしに、生存権を行使できない人々を「福祉」の対象とし、ベーシック・ペンションでカバーできない保障を別規定で規定しようという考えです。
そのための関連法制の整備・改定の提案も、と思っています。

上記の6区分ごと留意点を以下簡単に述べておきます。

ここでは、大きく3区分にしています。
はじめが「年金関連法」、次が「健康保険」「介護保険」関連、最後に、公務員など、主に一般の民間企業以外で被用者として働く人々が加入している保険機構に基づく区分です。
この就労先別区分の人たちが適用される年金及び健康保険、介護保険は、民間企業で就労する人とほぼ同様のものなので、当サイトで年金と健康保険と関連して論じるときは、この区分の人々も対象としているとご理解ください。

ベーシック・ペンションが最も関連しているのは年金制度。
しかし、年金制度が改定されれば、これと一部一体化されて管理されている健康保険も改定する必要が生じます。
健康保険財政と介護保険財政の問題と強く関連しており、改定案の熟慮が必要です。

「雇用保険」といわゆる「労災保険」の2種類だけです。
被用者のみ適用され、雇用者責任が大きい保険領域ですが、特に雇用保険については、ベーシック・ペンション導入と強く結びついており、改正には、配慮すべき重要な課題があります。

一部企業サイドも原資を拠出している児童手当。
ベーシック・ペンションでは、「児童基礎年金」で置き換えられ、かつ増額されます。
詳しくは、その説明記事の中で。

「福祉六法」と呼ばれるのは、
・生活保護法    ・母子及び父子並びに寡婦福祉法
・身体障害者福祉法 ・知的障害者福祉法
・児童福祉法    ・老人福祉法

の、6つの法律です。
ベーシック・ペンション導入において、年金制度の改定と共に、どう対処するか、最も重要な社会福祉制度が「生活保護制度」です。
また社会問題となっている母子世帯・父子世帯に対する福祉のあり方も、ベーシック・ペンションで改善できるものです。
次の障害者福祉に関しては、私の勉強が不足する領域ですので、時間をかけて検討し、提案していきます。
他の法律は、文字通り「児童」と「老人」を対象としたもので、他の「児童」「介護」という名称が付いた制度・法律と関連しているものでもあります。
経済的な支援以外の施設等に関する規定が多いのではと推察していますが、同様調べて必要な提案をと考えています。

財源をどうするかにおいて避けて通れない税制問題。
財源フリーの考え方に基づくベーシック・ペンションですが、その支給に伴い、それ以外の収入・所得への課税や保険料負担をどうするかの観点から、検討し、改定すべき重要な事項があります。
すべての税法をここではカバーしていませんし、それぞれの税法の多くは、個人と法人(事業者)双方の税法があります。
ベーシック・ペンションは個人に支給されるものなので、個人に対する税制が対象となりますが、間接的には法人のそれらにも影響を与えることがあります。

また、税率など詳しく掘り下げて検討すべき事項もありますが、専門家ではない限界から不十分な提案になるリスクもあります。
助言等も頂きながら、検討し、必要があればどんどん修正を加えていく。
そのスタンスで参ります。

直接関係はないと思われる法律ですが、一応福祉法体系の中に示されていたいくつかを書き移しました。
これから取り上げる改定法の順番は決めていませんが、極力重要度が高いものから順次取り上げていきたいと思っています。


前章を受けて、各論の第1回目は、ベーシック・ペンション導入の最大の意義・目的とも言える「生活保護制度」の取り扱いついて、現制度内容を確認しながら、説明します。

なぜ国がベーシック・ペンションを支給するのか?憲法の基本的人権を保障・実現するため:ベーシック・ペンション10のなぜ?-1(2021/1/20)
において、「基本的人権」「生存権」をキーワードにして、ベーシック・ペンション導入の意義・目的を述べました。

現状の生活保護法に規定する生活保護は、憲法第25条の「生存権」に基づいて社会福祉制度の一つとして制定されています。
しかし、その運用については、支給基準以下の所得しかない人の、ほぼ5人に1人しか受給していない捕捉率の低さが問題になっており、その法の目的どおり機能しているとは決して言えません。

そこでまず、その生活保護制度の目的と制度運用上の基準を、厚生労働省の資料で確認してみます。

最低生活を保障するに当たって「資産、能力等あらゆるものを活用することが保護の前提であり、扶養義務者による扶養などは、(生活)保護に優先する、とあります。

この運用に当たってのミーンズテスト(資力調査)等の審査の厳しさや裁量性などが引き起こすスティグマ(恥辱感)などが、不申請、否認などで低捕捉をもたらしているとされています。
日本人の精神特性がこうした行動と結果に示されているのですが、言うならばそれが「自助」努力の足りなさと指摘・指弾されることになっています。
国、所管官庁や自治体、そして一部の国民に、生活保護受給者・申請者を責める風潮があることもSNS等を通じて認められるのです。

しかし、ベーシック・ペンションの基本的な姿勢は、本人に押し付ける恥辱感としての「恥」ではなく、国や社会がこうした貧困を招き、生きることの苦、生活苦を強いていること自体を「恥」と感じるべきであり、その解消を図る責任を認め、実践するのです。

以下が、生活保護法で規定する、最低生活費として支給する額を決定するための体系と基準です。
上の図が体系項目を示し、下図3つが個々の項目の設定基準を示したものです。

以上の規定に従って、生活保護の各種扶助が算定・支給されますが、基本的に、これは世帯を構成する個人個人にではなく、世帯を一単位として支給されるものです。
その金額は、居住する地域の物価・地価、平均賃金などを考慮して、数種類に区分され、先述した別扶助や加算を行って、決定されます。
要は、細かい運用基準があり、一様ではないということです。

厚労省が提示したモデルがありますが、省略させて頂きました。
・3人世帯 ・高齢者単身世帯 ・高齢夫婦世帯 ・母子3人世帯 の4種類を挙げ、3つの地域区分をそれぞれ2種類に分けて、試算した例で、生活扶助と住宅扶助の2種類の扶助だけが支給されるとしての事例でしたが、かなり地域によって金額に差がありました。

ベーシック・ペンションの金額設定においては、その中の高齢者単身世帯の支給額が、一つの目安になります。
最高額は、133,250円となっています。
健康保険や介護保険を利用した場合の自己負担は、生活保護受給の場合ありません。
後述する15万円支給のベーシック・ペンションでは自己負担となりますが、負担率は、2割か1割ですし、高額療養費の規定で、一定額を超えると還付もありますから、ほとんどの場合、その支給額内で賄うことができるでしょう。

当然、夫婦や子どものある世帯では、個人個人に支給され、世帯合計額は、夫婦世帯で30万円、母子世帯で子ども一人の世帯は23万円。
家賃が高い地域では、厳しい世帯もあるかもしれませんが、他に、空き家活用なども含めた、厚生住宅制度などの住居・住宅政策を導入することでカバーすれば良いと考えます。

こちらのアプリで、いろいろな条件を加味した各地域の生活保護受給額の試算ができます。
試してみてください。
生活保護の金額、あなたはいくらもらえる?簡単な入力だけで保護費を自動計算します! (seikatsu-hogo.net)

では、実際に生活保護を受けている人の状況を見てみます。
2018年12月の速報値では、約164万世帯、約210万人が、総額約1兆9千億円を受給しています。

ここ数年、受給者数が減少しているとされていますが、低い捕捉率の問題は厳然としてありますし、コロナ禍で、これから当分申請者・受給者が増加することが予想されます。
首相も厚労省も受給申請を呼びかけていますが、どう変化していくでしょうか。

但し、この1兆9千億円は、公費いわゆる一般財源と地方自治体財源から支出され、生活扶助と住宅扶助及びその他扶助に充てられたものです。
実際の生活保護費として投入された負担金は、ほぼその倍の3兆8千億円。
その差の約1兆9千億円は、医療扶助として健康保険料から、及び介護扶助として介護保険料から充当されています。

生活保護受給者は、健康保険による医療費と介護保険による介護費は本人負担はゼロです。
一般的にベーシックインカムを導入し、生活保護を廃止すると、医療・介護利用時の自己負担が発生し、相当の額を設定しないと、以前の生活が維持できなくなることが予想されます。
そのため、従来の生活保護にBIを上乗せすべきと主張する論者が存在し、まとまらない原因の一つになっています。

こうした問題の解消を意図して、ベーシック・ペンションは、月額15万円を設定しています。

もう一つ確認しておきたいのが、どんな世帯が生活保護を受けているかを示す、世帯類型別保護世帯構成です。

65歳以上の高齢者世帯の受給世帯数が年々増加し、54%を超えました。
超高齢化社会の進行で、増加数も、比率も当分増え、上がり続けることは間違いないでしょう。
その多くは、預貯金がなく、老齢基礎年金のみの受給者で、働くこともままならない高齢者と想像できます。
年金制度の欠陥を示しているわけです。

また、他の分類に、<母子世帯><傷病・障害者世帯>があります。
このことから、生活保護制度は、生活保護法で規定される他、「母子及び父子並びに寡婦世帯福祉法」、「身体障害者福祉法」「知的障害者法」とも関連して運用・管理されていることが分かります。
ベーシック・ペンションは、これらとも関連した目的・意図も持つのです。

ベーシック・ペンション、生活基礎年金は、以下の年代区分に分けて設定した金額の専用デジタル通貨JBPCで支給されます。

1.0歳以上学齢15歳まで     児童基礎年金   毎月8万円
2.学齢16歳以上学齢18歳まで   学生等基礎年金  毎月10万円
3.学齢19歳以上満80歳未満まで  生活基礎年金   毎月15万円
4.満80歳以上           高齢者基礎年金  毎月12万円

この内、児童基礎年金と学生等基礎年金の額には、以下の制度で規定された金額も反映しています。
1.児童手当法、児童扶養手当法による支給規定
2.生活保護法に基づく児童対象扶助及び加算支給規定
これについては、別に「児童基礎年金」と関係した制度改定として、別記事で扱うため、ここでは省略します。

ベーシック・ペンションの導入で、生活保護制度は廃止します。
完全廃止することを意図した支給金額を設定しています。
仮に、捕捉率を2割、5人に1人が実際に受給しているとすれば、残りの約800万人も、従来の生活保護に当たるものが受給可能になるわけです。
合計、1千万人以上、1億2千万人の12分の1に当たります。
間違いなく、ベーシック・ペンションは、貧困対策への有効な政策となります。

生活保護の申請先、審査・支給事務等は各地域の福祉事務所が担当しています。
その全国の事務所数と現業担当者数を、把握する必要があります。

福祉事務所は、生活保護行政だけでなく、障害者福祉、母子・父子・寡婦世帯福祉等他の福祉行政も担当しています。
そのため、生活保護制度が廃止されても、他の職務は残ります。
しかし、その中で生活保護業務が占める割合は高いでしょうし、その廃止に伴い、障害者福祉、母子世帯など福祉における生活保護関連業務はなくなります。
そのため人員削減に伴う配置転換や事務所の縮小が可能になり、行政コストの削減に結びつきます。
その削減分は、他の必要な行政に充てることができるようになります。

もちろん、ベーシック・ペンションで生活保護制度廃止で何も問題が起こらないと断言はできません。
先述したように、健康保険の自己負担発生や、高い住宅費に対応できないケースなども発生するかもしれません。
ベーシック・ペンション導入時の移行に当たっての手続き等、当然課題も予想されます。
ただ、その殆どは、事前の想定と準備・対策で解決・対応可能でしょう。

何より、受けることが恥ずかしいとされ、第三者からは、恥ずべきことと指摘されることさえあった生活保護という制度と概念が、日本という国においては消滅し、不要のモノ、コトになるのです。
グローバル社会において少子高齢化社会問題などと共に「課題先進国」と自ら称し、その解決のモデルを示すべきであったにもかかわらず、「課題解決後進国」として「恥じるべき国及び社会」のモデルに成り下がっていた「貧困問題」への解決策を示すことになるベーシック・ペンション。

その有効性は、この生活保護制度の廃止に始まり、より広範に、いや、全国民に及ぶことになるのです。


前章では、生活保護制度の廃止を提案しました。
早速、「生活保護制度廃止」反対・批判の声が届きましたが、種々のご批判には、WEBサイトやSNS上で、誠実に、公開で対応していきたいと思っています。

第2回目の今回は、前回のテーマであった生活保護制度にある<教育扶助>や<正業加算>等も関係している、中学生以下の児童及び(学齢見做し)高校生へのベーシック・ペンション、「児童基礎年金」「学生等基礎年金」と関連した社会保障・福祉制度をどうするかを取り上げます。

初めに繰り返しになりますが、確認の意味で、提案している年代別のベーシック・ペンション支給額は以下です。

  1.0歳以上学齢15歳まで     児童基礎年金   毎月8万円
  2.学齢16歳以上学齢18歳まで  学生等基礎年金  毎月10万円
  3.学齢19歳以上満80歳未満まで  生活基礎年金   毎月15万円
  4.満80歳以上           高齢者基礎年金  毎月12万円

また、ベーシック・ペンション制では、一般の成人にデジタル通貨として支給する生活基礎年金月15万円は、以下の費目に使用することに限定しています。

  1.飲食費・住宅費・水道光熱費衣類日用品費などの生活基礎費
  2.通信費・交通費・国内旅行費及び一部娯楽サービス費 
  3.入学金・授業料・受験料、教育訓練研修費・教材費・新聞図書費
  4.健康関連費・市販医薬品
  5.医療保険・介護保険等社会保険給付サービス利用時の本人負担費
  6.その他法令で定める生活諸費用

まず、以下に、「児童手当法」及び「児童扶養手当法」に基づいて支給されている「児童手当」及び「児童扶養手当」の内容を簡単に整理しました。

1.児童手当
  ・0歳児~3歳未満  1万5千円
  ・3歳以上~小学生  1万円 ※但し第3子以降 1万5千円
  ・中学生       1万円
  (但し、所得制限があり、適用される場合は、一人月額5千円)
2.児童扶養手当額(障害年金を受給しているひとり親世帯に支給)
  ・子ども1人の場合:
       全部支給:43,160円、一部支給:43,150円~10,180円
  ・子ども2人目加算額:
       全部支給:10,190円、一部支給:10,180円~ 5,100円
  ・子ども3人目以降加算額(1人につき):
       全部支給: 6,110円、一部支給: 6,100円~ 3,060円
   ※それぞれ所得に応じて決定。

次に、前回課題にした生活保護制度に組み込まれている扶助・加算において児童・学生に関係した規定のポイントを以下に簡単に整理しました。

 1.生活扶助で加算される<児童養育加算>  
  ・18歳までの子ども1人につき1万円 (3歳未満等の場合:1万3,300円)
  ※ 3歳未満等は、3段階施行の1年目(平成30年10月~平成31年9月)
   の金額
 2.教育扶助
  ・小学生、中学生に対し、義務教育にかかる必要な学用品費や教材代、
   給食費等を補填するものとして支給
  (※ 修学旅行代は文科省就学援助制度支給)
  ・基準額(月額):小学校等2,600円、中学校等5,000円
  ・教材代、学校給食費、交通費:実費
  ・学習支援費(クラブ活動費)(年額):実費
  (小学校等上限額 1万5,700円以内、中学校等上限額 5万8,700円以内)
 3.生業加算:<高等学校等就学費>
  ・高校生に対し、高等学校教育にかかる必要な学用品費や教材代、交通
   費等を補填するものとして支給
  (※ 修学旅行代は文科省高校生等奨学給付金の活用やアルバイト等
   などにより負担。)
  ・基本額(月額):5,200円
  ・教材代・交通費:実費
  ・学習支援費(クラブ活動費)(年額):実費
  (上限額8万3,000円以内) 等

加えて、生活保護制度における成人に対して支給される<生活扶助>の一般例は、以下のようになっています。(省略)

この中の<高齢者単身世帯>の地方郡部等の、65,500円が一つの参考値になりますが、当然、親等保護者との共同生活が想定されるため、その満額を充てる必要はないと考えます。

以上の各目的及び規定にある種々の金額を考慮して設定したのが、
・児童基礎年金    月額 8万円
・学生等基礎年金   月額10万円 

です。

児童基礎年金及び学生等基礎年金は、基本的に、前掲の使途リストの、1,の費目の中の<住宅費><水道光熱費>の一部を差し引いたものと考えています。
また、太字で示した、<入学金・授業料・受験料><教材費>への利用を想定しています。

この8万円、10万円という金額で、上記の「児童手当」「児童扶養手当」及び生活保護内の関連扶助・加算に規定された金額はカバーされ、最低限の日常生活を送るための生計費もカバーできると考えます。

すなわち、「児童手当」「児童扶養手当」を廃止しても支障なく、児童・学生の保育と教育に必要な一定枠の費用、最低限の生活を営む上での食費等の生計費に充当するための基礎年金として適切と考えます。

もちろん、2つの行政事務コストも削減可能になります。

ベーシック・ペンションは、従来の財源による資金を流用?するものではなく、日銀が発行・支給する専用デジタル通貨です。
従い、ベーシック・ペンション導入で、従来の財源が、表現が悪いですが、浮いてきます。
以下の記事
鈴木亘学習院大学教授による、財源面からの2021年ベーシックインカム試案(2021/2/4)
によれば、児童手当・児童扶養手当分で、2.3兆円になります。
それらは、当然、さまざまな改革のための原資として利用されるべきです。
特に日本では子どもに対する財源投資レベルが低いとされています。
そのため、児童手当や児童扶養手当に廃止により浮いた財源は、この分野に投入すべきです。
もちろん、それだけでは足りませんから、生活保護廃止で不要になった財源からも投入します。
また同鈴木論考記事によれば、児童手当・児童扶養手当分で、2.3兆円、生活保護費分で1.8兆円になります。
では、何に投入するか。
保育改革、教育改革を提案する機会を待ちたいと思います。

次回は、ベーシック・ペンション導入目的の中で、生活保護制度と並んで大きな意義を持つ、社会保険関連法の中の、<年金制度>の取り扱いについて提案します。


今回第3回目は、ベーシック・ペンション導入と非常に関係している「国民年金制度」と「厚生年金保険制度」がどうなるか、どうするかを提案します。

皆保険制度と言いながらも未加入者・保険料未払い者、無年金者もいる。
満額でも、6万円5千円程度と低額。
とてもこの金額では、最低限の生活を維持することは困難です。
現在の生活保護受給世帯で65歳以上の高齢者世帯ががほぼ5割、約100万人を占めていることにもそれが表れています。

被扶養配偶者は保険料を負担する必要がなく、保険料を負担して働く女性に対して随分優遇されている。
ある意味、女性間格差をもたらしている。
そのことで、フルタイムで働きたい、あるいは、働ける女性が、被扶養配偶者になるように、短時間パートで我慢する、労働時間を制限する。
これで苦労している企業もあれば、うまくこれを非正規雇用者比率を高める方策として利用している企業もある。

種々問題があった「国民年金制度」は、ベーシック・ペンション導入で廃止になります。
そして、当然、厚生年金保険制度も変えます、変わります。

その前に、「廃止」というと間違って受け止める方がいるのですが、「79歳までは月額15万円、80歳以上は月額12万円の年金に切り替わる」ということです。
しかも保険料負担はありません。

これが、高齢者だけに支給されるのではなく、現役世代すべてに同様に、生活基礎年金として支給されるのです。
世代間の不公平感・不信感はなくなり、すべて平等です。
保険料負担ゼロの、文字通り、全世代型生涯型社会保障制度としての、真の国民皆年金制度、生活基礎年金が実現するのです。

さてもう一つ、肝心の、世代間不公平の象徴であった厚生年金保険制度。
こちらは、現役世代が高齢者世代を支えるという名目での「賦課方式」を廃止することで、高齢者偏重の社会保障政策の転換を果たすことになります。
生活基礎年金で、全世代が平等に年金を受け取るので、厚生年金保険の方は、高齢世代に達した人への上乗せ分ということになります。
70歳未満の収入があるすべての人が、厚生年金保険料を納付し、自分の将来のために積み立てていく保険です。

保険料は、被用者も自営業者も、パートタイマーもアルバイトも所得のあるすべての人が一定料率を納付する方式に変更し、老後の備えにします。
国が責任をもってその納付分を預かり、元本保証で運用管理します。

受け取りが可能になる年齢は、70歳からとし、年金または一時金どちらかを選択し、現金で受け取ります。
その所得には課税されません。
70歳になる前に死亡した場合は、配偶者もしくは生計を同じくする者に一括して支払うことにします。
この場合は、相続税がかかります。

高齢世代の年金を心配する必要がなくなり、生活基礎年金15万円が無条件で現役世代にも支給されるので、2階建て分の従来の老齢厚生年金分の保険料は、自分の積立分だけ必要で、これまでよりも削減できます。
但し、健康保険財政と介護保険財政の悪化を抑制するために、削減できる分の一部を、統合する健康保険と介護保険の保険料に転換します。

その案として、
・現状の2分の1を(老齢)厚生年金保険の保険料に
・4分の1は、統合する医療介護保険料に転換
・4分の1は負担削減

という方法を考えたいと思います。

全国民が生活基礎年金を受給するのに伴い、原則として、所得がある人はすべて老齢厚生年金に加入することとします。
ただ事務的な作業と手取り額を考えて、1回の支払いが5千円以上の賃金等所得者が保険に加入し、一定の料率の保険料を源泉徴収し、納付することにします。

従来の厚生年金保険料の雇用者・企業側が負担する法定福利費は、積立方式への転換により必要なくなりますが、全廃せず、例えば次のように変更しては、と思います。
・従来の4分の1は、被用者の積立用に加算(退職金に当たる)
・4分の1は、統合する医療介護保険料の企業負担分に
・4分の1は、改定する雇用保険料の企業負担法定福利費に変換
その結果、4分の1に当たる企業負担分が減ることになります。。

なお、事業収入をベーシック・ペンション通貨JBPCで受け取った事業者は、法定福利費及び消費税をJBPCで納付することができるとしています。
法定福利費をJBPCで納付する場合は、一定の手数料(1~2%)をJBPCで支払います。
預かり消費税分の納付には手数料はかかりません。

現在ある任意加入の「確定給付企業年金」と「確定拠出年金」は、改定が必要な場合それを行い、3階建て部分として継続します。
退職金機能、貯蓄機能を強化する選択肢があるわけです。

こうして、全世代全員支給生活基礎年金が1階部分、(老齢)厚生年金が2階部分、企業年金が3階部分の3階建て年金制度が、分厚く用意されることになります。
より確実に厚くするために、所得がない人も、定額保険料を選択設定して厚生年金に加入できる方式を考えてもよいかもしれません

現状、年金保険数理とかを根拠に、100年後の基準を設定することで、絶対に年金制度は破綻しないと、断言・豪語する論者がいるのですが、マクロスライドがどうのこうのとか、種々理解できない方が悪い、みたいな言い回しで、なんとなく誤魔化されている気がした年金制度。
ベーシック・ペンション導入で、そうした、あまり意味のない、将来どうなるかや、責任のあり方や所在さえも分からない制度に別れを告げることができることにも意義があると感じています。

以上により、国民年金法は廃止、厚生年金法は改正されることになります。

次回は、ベーシック・ペンションと直接は関係ないようにも思える、社会保険関連法のもう一つの軸「健康保険」に「介護保険」を加えて、どうするか、どうすべきかを考えます。




今回第4回目は、年金制度と共に社会保険制度を構成している、「健康保険」と「介護保険」等をどうするかを提案します。

社会保険関係法は、大きな目的・対象として「健康保険」分野と「介護保険」分野に分かれています。
「健康保険」は、公的医療サービス給付を提供するもので、「国民健康保険」「健康保険」「後期高齢者健康保険(正式名は、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づく健康保険」の3種類で構成されています。

国民健康保険を管掌する主体は、自治体で、国民健康保険料は、自治体ごとに設定されています。
この国民健康保険について、作家の橘玲氏が
国民健康保険では、満額の保険料を支払っている「正直者」は3割しかない(2018/8/19)で、国民健康保険の保険料の高さと、それによる保険料の減免を受けている人が大勢いることを書いています。
そして何より、その要因である国民健康保険料がいかに高いかについての問題提起もあります。

そのことへの対策も含めて、私は、国民健康保険、健康保険、後期高齢者健康保険(高齢者の医療の確保に関する法律)の、そして介護保険との統合を提案したいと考えています。

まず、健康保険と介護保険では、もちろん給付するサービスの質が、医療行為か介護行為かの違いがあります。
しかし、介護生活には、医療・看護が付随する、あるいは医療・看護に介護が不可欠です。
そして現状、そのサービスを受ける高齢者の自己負担額の両方の合計が一定基準額を超えると、高額医療・介護料の還付を受ける制度があります。
実務面から考えるべき統合、という視点があると言えます。

納付された保険料を財源とする健康保険財政が、超高齢化で圧迫され続けています。
介護保険も、団塊の世代が全員75歳の後期高齢者入りを終える2025年も間近に迫り、介護サービスニーズの増大とそれに伴う保険料財政の悪化予想が喧伝されています。
そのために毎年保険料が引き上げられ、現役世代の不満が増大しています。
高齢者を支える賦課方式により高く設定されている厚生年金保険料と併せて、世代間の負担・受給の不公平性が長く問題になっているのです。

政府がその対策として推し進めるのが、全世代型社会保障改革としている、高年金給付開始年齢の引き上げ、高齢者の雇用延長、高齢者の自己負担率の引き上げなどです。
いろいろやっているかのように見えますが、それで現役世代の負担が減るわけではありません。
なぜなら、「税と社会保障の一体改革」という言い訳を用いているので、人口減少による保険料の減少もあり、財政支出の増加が、それらの対策に拠る支出抑制見通し分を遥かに上回るからです。

一方高齢者の方も、保険料が引き上げられて年金から差し引かれ、受け取る年金額が減っていて、先述した政策が進められることと相まって、不安・不満が高まっています。
要するに、全員が不満・不安を高め続けている社会保障制度なのです。

そこで、前回課題とした年金制度改革提案
の中で、従来の厚生年金保険料をどうするかとして
・現状の2分の1を(老齢)厚生年金保険の保険料に
・4分の1は、統合する医療介護保険料に転換
・4分の1は負担削減

と提案しました。

ベーシック・ペンションの導入により、年金保険料の負担をゼロにできないことはないのですが、積立方式での老齢厚生年金制は残すべきでしょうから、半分負担は残す。
一方、健保の財政赤字を抑制することと、介護ニーズが今後30年近くは増え続け、このままの制度でいくと介護保険料も毎年上げざるを得ませんので、その対策を兼ねて、削減できる年金保険料の一部、具体的には、4分の1を、健康保険料と介護保険料用に切り替えてはどうかと提案しています。

ベーシック・ペンションにより、保険料を納付する年金制度は、(老齢)厚生年金制度だけとなり、シンプルになります。
任意の企業年金は残りますが。

一方、健康に関する社会保険は、以下の4種類もあります。
・国民健康保険法
・船員保険法
・高齢者の医療確保に関する法律
・介護保険法
保険制度事務を管理する主体組織の違いと保険料の負担の仕方に違いがありますが、基本的には、すべて健康に関わる保険です。
これをなんとか簡素化できないか。
とすると、一気に一つにまとめることはできないか。

給付サービスの需要が当分伸び続けることは、高齢化の進展で明らかです。
それは当然保険財政の圧迫が継続し、拡大することとイコールです。
保険料の負担・徴収を考えると、例えば、「健康介護保険料」と一本化したほうが良いのでは、また可能ではないかと思います。

保険料の徴収方法をどうするか。
企業などで就労する人は、扶養家族分は保険料を負担する必要はなく、給料から天引きされますが、自営業の人や所得のない人は、自治体が定める規定に従って徴収されます。
介護保険は、現在40歳以上の現役世代も、年金所得がある高齢者も保険料を負担しています。
そして、毎年負担額が上がっています。

そこで、給与所得がある人全員が、負担してきている従来の厚生年金保険料から、4分の1を引き継いで、健康保険と介護保険を統合した健康介護保険料会計に組み入れます。
これにより、単独での介護保険料徴収がなくなり、保険料負担者は広がり、以降の引き上げを停止または抑制します。
また、介護従事者の賃金引き上げに繋がる施策の導入に結びつけます。

と特定の視点だけに絞れば、何か方策とメリットを抽出し、そこから体系化ができるかもしれません。

以下に、4保険の統合の目的・メリットの主な項目を挙げました。

1.世代間負担の公平性の実現(保険料負担、給付サービス受給時の自己負担)
2.保険料負担増の抑制
3.保険財政の健全化・均衡化
4.給付サービスの充実
5.介護従事者の処遇改善
6.健康介護保険行政の統合と簡素化・合理化

もちろん、統合に当たって、課題・問題点が多くかつ大きいこと、簡単ではないことは承知しています。
しかし、現状多々ある問題の抜本的な改善・解決は、ベーシック・ペンション導入時でなければできないでしょうし、この機会にこそ行うべきと考えます。
再三再四申し上げているように、ベーシック・ペンション導入は、社会保障制度全体の大改革と一体のものであり、社会保障制度のイノベーションを意味するものです。

それを可能にする方策。
考察し、整理するには、多くの時間を必要とします。
「4保険を統合!」と叫ぶこと、提案することは簡単ですが、それだけの無責任が許されるはずがないことは重々承知しています。

実は、ベーシック・ペンション導入と同時に行うべきいくつかの社会保障制度改革課題の中で、最も難しいのが、この健康保険と介護保険分野と思っています。
財政問題と関わるだけにそうです。

特に、介護保険制度をどう改善するか、単独で考えることも難しい上に、健康保険とどう統合するのか?
基本的には、保険料の一本化を想定しつつ、中身の改善はそれとは別に考え、医療と重複する部分をどう調整するか。
こんな視点での検討・考察になるかと思っています。

引き続き研究課題として取り組み、具体的に、実現可能と思われる方法が整理できたものから提案し、あるいは問いかけていきたいと考えています。

次回は、労働保険分野に入る「雇用保険」に関する制度改定について考え、提案します。
BI導入で、雇用保険はなくなる、要らなくなる、という論調が多いのですが、私は、ある意味では現在の労働問題の改善・解決に結びつく制度改定を行うべきと考えています。



第5回目の今回は、雇用保険と、雇用保険も含む包括的な労働保険と労働関連法等をどうするかを考えたいと思います。

一般的なBI論では、BI導入で雇用保険をなくすことができるかのような論調も見られます。
しかし、私は、反対にベーシック・ペンションの導入を好機として、労働政策、労働法、労働保険制度全体の見直しと再構築に結びつけるべきと考えています。

雇用保険はもちろんのこと、労働関係の制度や法律は、かなりボリュームがあり、かつ細かい規定ばかりなので、ここで詳細かつ十分な議論・検討・提案はできません。

初めに、ざっと雇用保険について大雑把に把握しておきます。

労働者の生活や雇用を安定させるために国が運営している労働保険で、以下の主な目的・機能を持っています。

1.失業手当等の給付:失業した場合1日最大8,370円支給
2.育児・介護休業手当の給付:育休取得時、国から給与の67%支給
3.雇用保険2事業:雇用調整助成金支給、社会人再教育のための能力開発

まさに、ベーシック・ペンションが担う目的・役割の一つを担っている制度の一つであり、その対象は、雇用され賃金を得ている働く人です。
従業員を1人でも雇う企業は原則加入する必要がありますが、<暫定任意適用事業>といって、雇用保険を強制的には適用しない事業も例外的にあります。
常時雇用する労働者が5人未満の場合、個人経営の場合、農林・畜産・養蚕・水産業は、除かれます。
この例外になっている人が、人為的・悪意的に多いのです。

雇用保険の運営に用いられる資金は、被保険者と事業主が負担する保険料を積み立てたものに国が負担拠出する財源を合わせたものです。
雇用保険料率は賃金総額に対する割合で決まっており、労使折半で0.6%を積み立てています。
前述の雇用調整助成金には、事業主のみが0.3%が負担し、この雇用2事業に充てられる保険料収入は年間6千億円程度です。

そして、長引くコロナ禍は、以下のような大きな問題を引き起こしています。
1)(隠れ失業者である)休業者数の大幅増加、解雇・雇い止めの増加
2)失業手当と雇用調整助成金の膨大な支出による雇用保険財源の払底
3)休業手当と雇用調整助成金との公平性の欠如

4)非正規雇用者の失業手当、雇用手調整助成金未払い問題

そこで、こうした課題も頭に入れながら、ベーシック・ペンション導入によってどういう検討課題が生じ、改正や新たな政策・制度の検討に結びつけることが望ましいか、イメージで繋いでみることにします。

ベーシック・ペンション(以下BP)が失業手当の一部を先取りして補完する機能を持つ。
確かにそういう性質をBPは持っています。
BPにより、従来の失業給付額を抑制することが可能になります。
例えば、従来の給付算定額からベーシック・ペンション(月額15万円)を差し引いた額だけ給付する方式です。
これは、雇用保険を廃止するのではなく、残す発想です。
従来の生活レベルを落とさないようにすることが目的です。
但し、当然、その計算方法や支給日数・期間など、現状制度を参考にして新たに設定する必要があります。

そうすると、個人と雇用主が負担している雇用保険料率を下げるかどうか。
BPで積立分からの支出が減るので、保険料を引き下げても良さそうですが、コロナのようなことが今後もありえます。
コロナ禍で発生した失業手当や雇用継続給付金の膨大な支出増で、その資金をプールしておくことの重要性を経験しています。
また、一層雇用保険による給付を、方法を変えて厚くすることを検討しても良いでしょう。
そのため、現状の雇用保険料は据え置きとしては、と思います。
なお、厚生年金保険の方は、一部削減することを提案しています。

そしてまた、コロナ禍で、アルバイト・パート等非正規雇用者が、失業手当や雇用調整助成金などを受けられない問題が発生しました。
事業持続化給付金をもってしても事業継続が困難になった個人零細事業者も多数います。
そこで、被用者も雇用主も、働いて給与を得るすべての人が雇用保険制度に加入する、就労者皆保険制度、仮称「就労保険」への改正・転換を提案したいと思います。
もちろん、ベーシック・ペンションとは別に、です。

一方、ベーシック・ペンションは、企業サイドが解雇をやりやすくする要因となり、かつ賃金を低下・抑制させる要因にもなりうるものです。
むしろネオリベBI論者は、それを目的の一つに加えてさえいます。
とんでもない話で、それではBPを導入する意義がなくなってしまいます。

実は、BP導入を機に、解雇規制の強化や最低賃金の引き上げなど、労働政策の根本的な見直しをも進めることが望ましく、かつ必要なのです。

とは言っても、企業負担を徒に増やすのではなく、有所得者の皆就労保険を導入・促進するとともに、国費の有効な使い方を、コロナの経験と現状制度が抱える諸問題とを勘案し、新たな労働政策・労働法構築に結びつけたいと思います。

再度確認しますが、ベーシック・ペンションは、解雇をしやすくするための制度ではもちろんなく、最低賃金や賃金レベルを引き下げることに繋がる(企業サイドのための)制度でもありません。
より安心して働き、希望を持って働くことができるようにする。
それが、ベーシック・ペンション導入にあたって改定する雇用保険制度や労働関係制度改革の使命です。

なお、先述したようにコロナ禍において、失業手当と雇用調整助成金支給に関して、2つの給付を巡る公平性や持続性、企業サイドの悪利用、企業規模間の不公平性などの問題が顕在化しました。
その運用管理においても改善が必要です。
基本的には、雇用保険としては、失業給付に比重を置き、休業による雇用の維持はまず企業による休業手当支給基準の明確化と確実な実行を優先し、雇用調整の方は副次的な規定とすべきと考えています。

他にもBP導入に伴う社会保障制度全般の見直しの中に、行うべき課題が多々あります。
その一つが、労働基準法上の解雇規制の強化です。
現在の解雇予告期間規定1ヶ月を改正し、1ヶ月前の予告と予告期間満了後の賃金の3ヶ月分の支払いを企業に義務付けるというのはどうでしょう。
失業手当支出を削減できますし、安易で暴力的な解雇を抑制できます。

また、BPは賃金を抑えようとする方向に働くリスクがあります。
そこで、現状維持ではなく、一層の最低賃金引き上げを企業に義務付けます。
地域格差も最小限またはなくすくらいの政策とし、当分、全国一律時間給1,500円にするくらいの政策を、と考えます。
そのくらい払えない事業は行うべきではない、という考え方を定着させることが大切と思います。

それ以外にも、コロナ禍だけに限らず問題になっている非正規雇用率の高まりによって起きているワーキングプア・格差問題対策のための、「労働契約法」「労働者派遣法」「パートタイム・有期雇用労働法」などの改正、能力開発事業の実効ある運用も、雇用保険料積立の有効活用や雇用の質の向上のためにも必要と考えます。
その詳細について論じることは、時間と能力不足で不可能ですが、今後も関心をもっていきたいと思っています。


第6回目の今回で、一旦このシリーズの締めくくりとしたいと思います。
テーマは、すべての国民個人個人にベーシック・ペンションを支給するため、所得税の算出方法が変わること、すなわち所得税法が変わることを取り上げます。そして、これまでのシリーズを財源面から総括することです。

現在の所得税法において、賃金・給与収入がある人は、その収入から源泉所得税として、社会保険料と合わせて差し引かれ(控除され)ます。
その場合、配偶者の一定の基準額以上の年収の有無と額による配偶者(特別)控除、扶養する子どもや親族がいる場合の扶養控除の金額が設定されており、その控除額などを差し引いた額、課税所得に所得税が課税されます。

国税庁のホームページの<家族と税>というページにあったそれらの控除から、以下主なものを転載しました。

初めは、<配偶者控除>と<配偶者特別控除>です。
<特別>が付くのと付かないものとの違いは、配偶者の年間合計収入額が103万円以下か103万円超により、控除される額が違うことです。
次は、<扶養控除>
それから<ひとり親控除・寡婦控除>という控除もあります。

給与所得を得ている人は、これらの控除を受けるために、12月に企業から、以下の書類を出すように指示されたことがあるはずです。
この書類を提出し受理されれば、上記の控除を受けて課税所得が算出され、源泉所得税と社会保険楼料が計算され、給与から差し引かれて、手取り収入になるわけです。

給与所得が計算されると、課税所得額に応じて設定された<税額表>により源泉所得税が決まります。
月給の場合の税額表、日払いの場合の税額表。どちらも省略しました。

給与以外の家賃収入や副業の収入など、他の所得をすべて合算した年間総収入に対して、本来の所得税は課税されます。
その算定手続きが「確定申告」です。
現状の年間収入に対する年間課税所得の計算には、上記の各控除以外に設定された控除項目も組み入れて、最終的な年間の所得税が決められます。
その算出基準を示すものとして<所得税の早見表>がありますが、ここでも省略しました。

よく耳にし、目にするのが、こうした税額表から、所得が多い人ほど税率が高くなる「累進課税」方式が取られていることが分かります。

月額にしても、日額にしても、そして年間総額にしても、所得税の計算において課税対象から減算した控除は、ベーシック・ペンション導入時には、行われなくなります。

なぜなら、扶養対象者すべてが無条件で、ベーシック・ペンション生活基礎年金を支給されるからです。
学齢15歳以下は月額8万円の児童基礎年金、学齢18歳までは10万円学生等基礎年金、一般成人は15万円の生活基礎年金、85歳以上は12万円の高齢者基礎年金です。

基礎控除は、現状のまま廃止せず、継続することでよいかと思います。
また、前述の<ひとり親控除・寡婦控除>も、継続で良いのではないでしょうか。

以上の控除がなくなることで、課税対象所得額が増えます。
すると当然税額が増えます。
源泉税は増えますが、すべての人はベーシック・ペンションを受給するので、実質収入は増えます。

しかし、国の税収は当然増えます。
先述の、鈴木亘氏の月額10万円のベーシックインカム支給による財源可能試算は、以下でした。
鈴木亘学習院大学教授による、財源面からの2021年ベーシックインカム試案

1)生活保護(生活扶助と住宅扶助分)      1.8兆円
2)基礎年金                 23.9兆円
3)配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除等  51.2兆円
4)失業等給付                 1.3兆円
5)育児休業給付                0.7兆円
6)児童手当・児童扶養手当           2.3兆円
     合   計             81.2兆円

この3)が配偶者(特別)控除や扶養控除がなくなった場合に増収となる所得税のはずですが、どうやらこの鈴木氏の試算は間違っているようです。
(参考:日経2021/1/19経済教室)
還付型給付、自己申告方式で あるべき安全網:鈴木亘 学習院大学教授

年間の所得税収総額でも20兆円前後程度ですから。
どこから、どうやって51兆円を捻出したのか不明です。
日経もこのことには気づかず、指摘もしていないでしょう。
(私の勝手な勘違いかもしれませんが。)

生活保護費は、まあまあ妥当です。
しかし、基礎年金額は、年間支給総額を示しており、そこには、厚生年金からの拠出分や国年加入者の納付分も含めての支出も入っており、国の負担分は少額ですから、これもいい加減なものです。
代替財源81兆円のうち、75兆円が出どころがいい加減なので、消費税率や所得税率のアップは、鈴木氏試算では到底足りないものになります。

変なところで脱線してしまいました。

各種控除廃止による所得税収増額の試算は、別の機会に行うとして、増収は間違いありません。
加えて、私は、賃金収入がある人すべてが所得税と健康介護保険料を低率・低額で負担すべきと考えており、この面からも所得税法を改定することになります。

ただ問題は、増税感を持つ人が増えないこと。
当然ですが、ベーシック・ペンションで、個人はもちろん、複数で家族構成をする世帯全体での収入増は、それなりの額になります。
その増収額が、新たに所得税を負担することになる人や、税率改定でそこでの所得税増税となり、不満が起きないような税率を考える必要があります。

いずれにしても現状の月額・日額税額表、年間税率表いずれも大幅な改正を必要としています。
そこでは、所得再分配の在り方も再検討されることになります。
私の継続検討課題の一つとしておきたいと思います。

MMT論によるBI導入がもたらす経済的リスク、政治リスク、グローバル社会リスクを回避するベーシック・ペンション。
これにより、既存の社会保障支出の廃止・削減が行われ、関連する行政コストの逓減も見込まれます。
その額がいくらに見積もることができるか。
こうした分析・試算に強い方の協力を得ることができれば、と思いつつ、今は先送りさせて頂くとして、方向性の話だけ、最後に簡単に述べたいと思います。

コロナで、赤字国債の増発による財政支出が絶対的に必要という認識が、ほぼ共有化されるに至っています。
そうなると、財政規律云々の議論もなされなくなるかもしれません。
しかし、それはそれとして、ベーシック・ペンションの視点から考えると、削減・節約可能な財源は、しっかりとした目的をもった、将来に向けての投資に充てるべきと思います。

児童基礎年金で、将来を支え、社会を先導する子どもたちへの投資の思想は、一部実現することになります。
それでも恐らく、子どもへの投資レベルの国際的比較では、日本はまだまだ後塵を拝していることは間違いありません。
従い、保育や教育への投資に重点的に振り向けることを最優先とすべきと考えます。
これは、全世代型社会保障制度を推進する課題の一つであり、すべての社会保障制度改革への投資の一環でもあります。

また、30年後を見据え、即効性はないかもしれませんが、長期的な課題への投資に振り向けることも不可欠です。
例えば、
1.災害に強い国土強靭化対策
2.カーボンゼロ、100%再生エネ、水素社会実現のための技術開発
3.コロナ禍等グローバル社会問題への対応を前提とした自給自足及び海外事業化並行農業システム開発
など。
他にも多くのハードルが高い課題があります。
要するに、ベーシック・ペンションは、そうした2050年を見据えての、多面的で多様な社会システムや社会経済システム、国家行政システムの構築をリスタートさせるきっかけとなるものなのです。
またそうすべきなのです。

今回で、一旦、ベーシック・ペンション導入で必要な社会保障関連諸制度・法律の取り扱いについて考察・提案する作業を終わります。

10年前の東日本大震災の余震

今回のテーマで、翌日の記事を書くことを決め、床についた時に福島で震度6強の地震が発生したことをスマホで知りました。
なんと、2011年10年前3月11日の東日本大震災の余震だと。

重なる被災での心的な不安・負担は想像できないものがあります。
最小限の被害で収まることを念じるばかりです。

コロナ禍に追い打ちをかけるかの厄災。
やはりこうしたときのベーシック・ペンションの必要性を強く感じた瞬間でした。
社会システム、社会経済システム、そして文化としての日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金。
何十年かかっても実現したい、させたい、させるべき。
その思いは募ります。

<本稿リスト>
◆ ベーシック・ペンション導入に伴う社会保障・社会福祉制度等関連法改定課題体系(2021/1/30)
◆ ベーシック・ペンションによる貧困問題改善と生活保護制度廃止(2021/2/6)
◆ ベーシック・ペンションによる児童手当・児童扶養手当廃止と発生余剰財源の保育・教育分野への投入(2021/2/7)
◆ ベーシック・ペンションによる年金制度改革:国民年金廃止と厚生年金保険の賦課方式から積立方式への改正(2021/2/8)
◆ ベーシック・ペンション導入で、2健保、後期高齢者医療、介護の4保険を統合して「健康介護保険制度」に (2021/2/11)
◆ ベーシック・ペンションによる雇用保険制度改革・労働政策改革:安心と希望を持って働くことができる就労保険制度と労働法制を(2021/2/13)
ベーシック・ペンションによる所得税各種控除の廃止と税収増:子どもへの投資、30年ビジョンへの投資へ(2021/2/14)


当サイトの主要課題の一つ「BI実現の壁超克シリーズ」。
1つ目の壁が「財源・財政の壁」、2つ目が「マクロ経済問題の壁」でした。
一応、その取り組みは、終えています。
(記事紹介は、後述)

続く、8つの壁の3つ目と4つ目の壁が「社会制度問題の壁」と「労働・社会観の壁」です。
その両方の取り組みに備えることも兼ねて、当サイトの前身であるサイト・https://basicpension.jp の記事の中から、<社会保障制度>などの関連シリーズ記事を、それそれ一つの記事にまとめる作業を行っています。

今回は、2021年2月に投稿した、記事を一つにまとめました。
その多くで、今後の課題としており、当サイトでの、これからの取り組みに拠ることになっているわけです。
当然、本過去記事内容は、その時点での案・構想です。
これからの「BI実現の壁超克シリーズ」においても、最終形・最終提案に至ることはないかもしれませんが、2050年までの実現に向けての、シン化作業に取り組んでいきます。

この後も、<社会保障制度><社会制度・システム>シリーズ化の統合記事をいくつか予定しています。

なお、旧記事は、内容の重複を避けるため、順次、非公開化/リダイレクト/canonical設定などにより整理し、検索エンジン上でも重複を残さない運用を行います。