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デジタル通貨給付の原点|CBDCとベーシックペンション構想からシンBI2050へ

野口悠紀雄氏著『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』から考えるデジタル通貨ベーシック・ペンション|旧サイト記事集約移管シリーズ6

本稿は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を前提とした給付制度の可能性について、2021年時点で検討した内容を整理・統合したものです。

当時は、デジタル通貨を活用した給付制度という視点から、ベーシック・ペンション構想を中心に検討を行っていました。
その後の検討を経て、現在では、通貨そのものの設計と社会制度の統合という観点から、「シンベーシックインカム2050」の構想へと発展しています。

本稿は、その初期的検討段階の記録として位置づけられるものです。

*当サイト「シン・ベーシックインカム2050」では、旧Webサイト「ベーシック・ペンション」(https://basicpension.jpで公開していた記事を、アーカイブとして順次統合・移管しています。

*本記事は、野口悠紀雄著『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』をもとにした全5回のシリーズを再構成した統合版です。旧記事については、内容重複を避けるため、順次整理(非公開化・リダイレクト等)を行います。

野口悠紀雄氏著『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』から-序

 先日当サイト管理者のパーソナルWEBサイトの以下のブログで、野口悠紀雄氏著『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』(2021/11/15刊・新潮社)を紹介しました。
野口悠紀雄氏著『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』:勝手にしん・せん書-3 (2021/12/12)
 そこで書きましたが、同書を参考にして、当サイトで提案する日本独自のベーシックインカム、ベーシックペンション(Basic Pension, BP)の専用デジタル通貨(Japanese Basic Pension Currency, JBPC)としての給付について、技術面・運用面での課題などを再検討していきます。

 その方法・方針としては、野口氏の書を参考にしますが、その構成に従って検討・確認を進め、中央銀行デジタル通貨CBDC やデジタル人民元、ディエム、ビットコインなどの仮想通貨、電子マネー、そして日銀及び市中銀行とCBDCとの関係等の課題や特徴等に関する記述を抽出し、JBPCと比較・検討・考察を行なっていきます。

『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』の構成

 まず、同書の構成を、各章ごとの項単位まで以下に示しました。

はじめに
第1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨
 1.世界通貨「リブラ」の構想が与えた衝撃
 2.電子マネーではなく、仮想通貨だから重要
 3.本当は日本にとっても大問題
 4.プライバシーを求めるのか?管理社会を許容するのか?
 5.価格安定化は容易でない
 6.「リブラ」から「ディエム」へ
第2章 CDBCの仕組みと必要性
 1.CBDCの仕組み
 2.国民の利便性向上と金融包摂
 3.中央銀行の立場から見て、なぜデジタル通貨が必要か?
 4.複雑でコストが高い現在の仕組み
第3章 デジタル人民元は大きな脅威となる
 1.デジタル人民元の基本構造
 2.デジタル人民元の詳細構造
 3. デジタル人民元はいかなる影響を及ぼすか
 4.広範に使われている電子マネーはどうなるのか?
 5. デジタル人民元の目的は電子マネーの排除?
第4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える
 1.中央銀行によるデジタル通貨発行の競争が加速
 2.銀行預金が流出するという大問題
 3.銀行預金の流出への対処法
 4.プライバシー問題にどう対処するか?
 5.中央銀行による通貨発行の独占は必要か?望ましいか?
第5章 ビットコイン創始者は「国の管理から自由な通貨」を求めた
 1.「プライバシーが守られる通貨」に惹かれた人々
 2.ねじ曲げられた当初の理想
 3.資金逃避先となったビットコイン
 4.アンドリーセンがビットコインに夢を託す
 5.仮想通貨の重要性が広く認められるようになった
 6.ビットコインは「デジタル・ゴールド」になったか?
第6章 「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁
 1.「デジタル円」は動き出すのか?
 2.日本はキャッシュレス後進国
 3.手数料収入を当てにするメガバンクのデジタル通貨戦略は間違い
 4.乱立する日本の電子マネー
 5.「デジタル円」の利用率をゼロにできるかの?
第7章 パラダイムの転換に成功した社会が未来を拓く
 1.デジタル人民元のインパクト
 2.スゥェーデンやユーロはCBDC導入に向かう
 3.デジタルドルはどうなるか?
 4.「ディエム」はどうなるのか?
 5.CBDCはパラダイムの転換
終 章 デジタル通貨時代に向けての5つの提言
 1.危機感を持って通貨主権を守れ
 2.デジタル通貨政策を確立せよ
 3.銀行のビジネスモデルを、「手数料」から「データ利用」に大転換せよ
 4.個人情報主権を確立せよ
 5. デジタル通貨をきっかけとして、日本の未来を構築せよ


 上記構成順に確認作業を進め、JBPCの在り方とその課題・問題と関係する事項があれば、都度検討テーマに設定し、あるべき形・方式を整理していきます。

日本独自のベーシックインカム、「ベーシック・ペンション生活基礎年金」基本事項

 そのために、これまで提案してきているベーシック・ペンションに関する基本事項を以下に提示しました。

生活基礎年金ベーシック・ペンションBPの定義

1.すべての日本国民に、個人ごとに支給される。
2.生まれた日から亡くなった日まで、年齢に応じて、無条件に、毎月定期的に生活基礎年金(総称)として支給される。
3.基礎的な生活に必要な物品やサービスを購入・利用することを目的に支給される。
4.個人が、自分の名義で、日本銀行に、個人番号を口座番号として開設した専用口座宛に支給される。
5.現金ではなく、デジタル通貨(JBPC、Japanese Basic Pension Currency)が支給される。

6.このデジタル通貨は、国の負担で、日本銀行が発行し、日本銀行から支給される。

デジタル通貨JBPCの特徴および条件

【個人番号日銀口座限定】
1.日本銀行に開設した、個人番号を口座番号とするJBPC専用口座だけに保有でき、他の市中金融機関に送金・預金・保管はできない。
【国内限定】 
2.日本国内でのみ利用できる、一種の地域通貨である。
【使途限定】
3.利用できる商品やサービスは、基礎的な生活を送るための利用に限定される。
【利用事業所限定】
4.その目的に適応した、事前に申請し、認可された事業所で利用できる。
【デジタル通貨限定】
5.個人番号カードまたはインターネット上で、特定のアプリケーションソフトを用いて支払い決済し、それと同時に、個人口座から引き落とされる。
【期間限定】
6.利用できる期間が決められており、期限内に利用しない場合は自動的に日本銀行に回収される。
【譲渡・相続・資産化禁止】
7.個人当人の基礎的な生活に利用することを目的としており、他人への譲渡・相続や資産として長期に保有・蓄財することはできない。
【事業所法人番号紐付け日銀口座限定】
8.3の条件を満たし、事前に届け出て認可された事業所は、法人番号を口座番号としてたJBPC専用口座を、日本銀行に開設する。
【処理処分限定】
9.通貨保有者の利用によりJBPCを専用口座で受け取った事業所(以下、一次事業所)は、以下のいずれかの方法により、処理・処分できる。
 1)一次事業所と同様事前に申請し、承認を得た二次事業所からの物品の仕入れ・調達のために、一定期間内に利用する。

 2)国や地方自治体に納入する税金、保険料その他の納付金費用に充当し、国もしくは地方自治体に、一定期間内に納付する。
 3)決算時に、保有するJBPCを利益金と相殺処分(損金処分)して、日本銀行に送付する。
 4)上記のいずれかで、JBPCを一定期間内に利用・納付・処分することができない場合、期限内に日本銀行に届け出て、現金と交換する。

【日本銀行管理限定】
10.利用・流通・保管されたすべてのJBPCは、上記の期間内にすべて日本銀行に回収・返却され、日本銀行の資産処分により消却(バーン)され、還流してきたJBPC残高はなくなる。

当シリーズでの課題の範囲と除外した課題

 なお、繰り返しになりますが、この野口氏著『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』を用いての本シリーズでは、BPが抱える重要な課題のうち、JBPC給付額、その財源問題、その膨大な金額の給付によって発生が予想されるインフレ問題など重要な課題・問題については、間接的・副次的に論じることはあっても、主題として取り上げることはありません。
 それらについては、別のシリーズや個別記事で対応していきます。

 また、当サイト提案は、全額専用デジタル通貨でのBP給付を目標・理想とするものですが、デジタル通貨化自体のハードルの高さや、財源問題などを現実的に考えた時、その一部は先行して現金またはこれに替わるデジタル通貨以外での給付を採用することもあり得るとしたいと思います。
 その考えの一端は、以下の記事で提示しています。

全員月額7万円で始める:ベーシックインカム現実的実現法考察-1(2021/7/17)
月額7万円ベーシックインカムの条件と期待効果:ベーシックインカム現実的実現法考察-2(2021/7/18)
無理なく、漸進的・段階的に導入するベーシックインカム:ベーシックインカム現実的実現法考察-3 (2021/7/19)

参考:ベーシック・ペンションの専用デジタル通貨化に関するこれまでの記事リスト

◆ 日本初デジタル地域通貨「白虎」開発の藤井靖史会津大客員准教授にアプローチ (2020/12/18)
ブロックチェーン専門家の藤井靖史氏が日本独自のBI、ベーシック・ペンションを評価 (2020/12/29)
なぜ日本銀行が、デジタル通貨でベーシック・ペンションを発行・支給・管理するのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-3(2021/1/22)
なぜ循環し、回収消却され、再生し、世代を継承していくベーシック・ペンションなのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-6~10(2021/1/24)
なぜベーシック・ペンションは現金ではなくデジタル通貨なのか:DX時代の必然としてのJBPC (2021/2/17)
ベーシック・ペンション実現に10年を想定する4つの理由(わけ) (2021/3/4)

参考:ベーシック・ペンションの基礎知識としての5記事

日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)

<『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』とJBPCシリーズ>展開予定

次回から本論に入りますが、おおよそ以下の手順で進めて行く予定です。

第1回:<第2章 CDBCの仕組みと必要性><第3章 デジタル人民元は大きな脅威となる>から考えるJBPC
第2回:<第4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える>から考えるJBPC
第3回:<第1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨><第5章 ビットコイン創始者は「国の管理から自由な通貨」を求めた> から考えるJBPC
第4回:<第6章「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁>から考えるJBPC
第5回(最終回):<第7章 パラダイムの転換に成功した社会が未来を拓く><終章 デジタル通貨時代に向けての5つの提言>から考えるJBPC総括

仮想通貨、電子マネー、デジタル通貨、JBPCの特徴:『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』とJBPC-1(2021/12/17)

野口悠紀雄氏著『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』(2021/11/15刊・新潮社)を参考にして、当サイトで提案する日本独自のベーシックインカム、ベーシックペンション(Basic Pension, BP)の専用デジタル通貨(Japanese Basic Pension Currency, JBPC)としての給付について、技術面・運用面での課題などを再検討するシリーズを始めました。

先述の序論を受けての今回は、第1回目、<第1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨> を取りあげます。

第1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨>から

本章は以下のように構成されています。

第1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨
 1.世界通貨「リブラ」の構想が与えた衝撃
 2.電子マネーではなく、仮想通貨だから重要
 3.本当は日本にとっても大問題
 4.プライバシーを求めるのか?管理社会を許容するのか?
 5.価格安定化は容易でない
 6.「リブラ」から「ディエム」へ

リブラとは何か、何を目的として発行が検討され、どんな理由で発行されない状態となってるのか。
この問題については先送りにして、上記の構成にほぼ従って、いくつかの課題に分けて確認・検討していきます。

仮想通貨と電子マネーとの違い

リブラは電子マネーではなく、仮想通貨(暗号資産、以下仮想通貨と表現します)。
双方は、キャッシュレスの決済手段としては同じだが、仕組みは本質的に異なる。

電子マネーの特徴

現在の電子マネーの主流は、QRコード決済によるものだが、銀行預金での口座振替を簡単にするための手段であり、技術的には革新的なものではなく、現在の銀行システムの上に作られた仕組みである。
そのため、独自の通貨圏を形成することはない。
電子マネーの受け取り者は、それを用いて別の支払いをすることはできず、利用は1回限りであり、現金つう羽化のように転々と流通することはない。
受け取り店舗になるためには審査があり、受け取った電子マネーを現金に換える際、高い使用料を支払う必要がある(ことが多い)。
一国の通貨圏の中にあるため、国際的な送金には使いにくい。

仮想通貨の特徴

「ブロックチェーン」という、新しく革新的な技術を用いた仕組みで運営される。
既存の銀行システムの外にあり、独立して運営され、独自の通貨圏を形成できる。
誰でも自由に受け取り手になることができ、受け取った仮想通貨を他の支払いに当てたり、低コストで送金・決済ができ、利用者は使いやすい。
国から独立しており、世界共通の決済手段として、国境を超えて、低コストで送金できる。

専用デジタル通貨ベーシック・ペンションの特徴

日本国が、一種の法定通貨として、「ブロックチェーン」技術を用いて発行管理する、一種の仮想通貨。
既存の銀行システムとは別に開発された、日本銀行独自のシステムにより、発行管理される。
すべての日本国民が、自分の日銀専用口座で受け取り、支払い決済に用いる。
受け取った国民は、特定の商品やサービスに限り利用でき、他者への譲渡や貯金、相続はできず、一定期間内に利用されない未使用分は日銀に回収される。
日本国内の、審査を受けた企業・事業者のみ受け取ることができ、同様認定された企業・事業者への支払い・決済または政府・地方自治体への納付・送金、日銀への送金に利用できる。
国家の管理に基づき、国内に限定して利用され、他国間での送金・決済はできない。

ブロックチェーンと仮想通貨におけるプライバシー(匿名性)と管理

仮想通貨取引は、暗号で保護される。
通貨の取引情報を格納する箱を意味する「ブロック」とそのブロックを時間順に「鎖」状に繋げていく「ブロックチェーン」を形成。
その記録作業は、「マイナー」あるいは「ノード」と呼ぶコンピュータで行い、それらのコンピュータの集まりによりブロックチェーンが運営される。
このブロックチェーンは、デジタル情報を改ざんできないようにする仕組みであるのが最大の特徴の一つであり、強みである。

このブロックチェーンには、プライベート・ブロックチェーンとパブリック・ブロクチェーンの2種類がある。
前者は、管理者が信頼できると判断したコンピュータだけが作業に参加でき、記録の信頼性は管理者が担保する。
従い、中央銀行が仮想通貨を発行する場合、このプライベート・ブロックチェーンが用いられる。
そこでは、本人確認を行うことでマネーロンダリング等の不正行為を排除できるが、管理者によって詳細な取引情報が把握され、かつ管理者はそれを利用できる。
従い、万一情報管理体制に問題が生じれば、情報漏洩等の問題が生じる。
一方パブリック・ブロックチェーン型仮想通貨では、だれがどのような取引を行なっているかわからず、不正取引を完全に排除することはできないが、取引のプライバシーは完全に確保される。

すなわち、「匿名性(プライバシー)のあるマネーを求めるのか、管理可能なマネーを求めるのか」という相対する問題が存在する。

ベーシック・ペンションにおけるプライバシーと管理

一般的な個人の市中金融機関における預貯金において、例えばマイナンバーカードと紐付けされることで、個人のプライバーが侵されると反対する人が多い。
ベーシックインカム論者においても、基本的には現金給付を前提とした議論・提案を行なっており、ここでは個人情報云々は、現金を給付する対象を特定する上での個人情報の紐付けでとどまる。

当サイト提案の専用デジタル通貨JBPCは、日本銀行がプライベート・ブロックチェーン型のデジタル通貨を発行する形式となるため、誰がいつ何に使ったかの情報はすべて把握できる。

このことを個人情報保護の観点から反対する人も多々いる。
しかし、元来、当JBPCは基礎的な生活を送る上で必要な支出に充てるために支給するものであり、社会経済システムの基盤として、国内の需要と供給のバランスを図り、安定的な生活と基礎経済・基礎経営の構築をも目標としている。
従い、その利用情報は、市民・国民が暮らし、その地域で事業活動を行う企業と事業者にとって望ましい社会経済基盤の整備拡充を図るために有効に用いることを目的としている。
もちろん、JBPCは世帯ではなく、個人個人に給付されることから、(親権者・後見人による代理行使も前提として)BPの導入目的に適合した利用方法がなされているかなどの確認も、管理者(日銀及び国家行政)は行う。

価格安定化の必要性の有無

一般的に電子マネーは、現状の通貨システムの不便さを補う意味で用いられており、その価格・価値は、法定通貨と同じ基準を用いていることから、価格の安定化云々の心配はない。
しかし、ほとんどの仮想通貨では、ステイプルコイン、すなわち法定通貨と同じ価格・価値に安定化するルール、基準はない。
これが、仮想通貨における最大の問題だが、逆にそれだから仮想通貨として求められるという性質をもつ所以と言える。
すなわち、決済手段として用いる上での前提条件を欠いているわけだ。

ベーシック・ペンションJBPCは、ステイプルコイン

ベーシック・ペンション専用デジタル通貨JBPCでは、それが日銀により発行管理される法定通貨の一種であるステープルコインであることから、価格の安定化という問題・不安はまったくない。
加えて、日本国内だけで流通・通用する通貨であり、外国為替市場における円高・円安動向とも(BP実現時には間接的に関係することになる可能性もあるが)直接関係することはない。

リブラとディエムについて

この第1章は、<リブラが口火を切ったデジタル通貨>としており、本稿でもリブラ及び変更後のディエムについて触れるべきですが、それがJBPCと直接関係していないので、今回は省略します。
まあ、欧米各国の政府・中銀が反対する「ディエム」であり、非現実的ではありますが、仮に実現しても、JBPCは、日本国内で特定目的でのみ利用されるもので、関係性はないことを確認しておきます。

以上、今回は、当初第2章と第4章を取り上げる予定でした。
しかし予定を変更し、第1章のみ、しかも「リブラ」とは無関係に、デジタル通貨の性質や特徴に関する記述に焦点を当てて確認・整理し、当サイト提案のベーシック・ペンション専用デジタル通貨の特徴と比較する形で述べてきました。

次回は、<第2章 CDBCの仕組みと必要性>を取り上げます。

なお以下に、関連する参考情報を、かなりのボリュームですが転載しています。
ご関心をお持ち頂けるものがありましたら、サラッと確認頂ければと思います。

<参考資料>:『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』の構成

はじめに
第1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨
 1.世界通貨「リブラ」の構想が与えた衝撃
 2.電子マネーではなく、仮想通貨だから重要
 3.本当は日本にとっても大問題
 4.プライバシーを求めるのか?管理社会を許容するのか?
 5.価格安定化は容易でない
 6.「リブラ」から「ディエム」へ
第2章 CDBCの仕組みと必要性
 1.CBDCの仕組み
 2.国民の利便性向上と金融包摂
 3.中央銀行の立場から見て、なぜデジタル通貨が必要か?
 4.複雑でコストが高い現在の仕組み
第3章 デジタル人民元は大きな脅威となる
 1.デジタル人民元の基本構造
 2.デジタル人民元の詳細構造
 3. デジタル人民元はいかなる影響を及ぼすか
 4.広範に使われている電子マネーはどうなるのか?
 5. デジタル人民元の目的は電子マネーの排除?
第4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える
 1.中央銀行によるデジタル通貨発行の競争が加速
 2.銀行預金が流出するという大問題
 3.銀行預金の流出への対処法
 4.プライバシー問題にどう対処するか?
 5.中央銀行による通貨発行の独占は必要か?望ましいか?
第5章 ビットコイン創始者は「国の管理から自由な通貨」を求めた
 1.「プライバシーが守られる通貨」に惹かれた人々
 2.ねじ曲げられた当初の理想
 3.資金逃避先となったビットコイン
 4.アンドリーセンがビットコインに夢を託す
 5.仮想通貨の重要性が広く認められるようになった
 6.ビットコインは「デジタル・ゴールド」になったか?
第6章 「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁
 1.「デジタル円」は動き出すのか?
 2.日本はキャッシュレス後進国
 3.手数料収入を当てにするメガバンクのデジタル通貨戦略は間違い
 4.乱立する日本の電子マネー
 5.「デジタル円」の利用率をゼロにできるかの?
第7章 パラダイムの転換に成功した社会が未来を拓く
 1.デジタル人民元のインパクト
 2.スゥェーデンやユーロはCBDC導入に向かう
 3.デジタルドルはどうなるか?
 4.「ディエム」はどうなるのか?
 5.CBDCはパラダイムの転換
終 章 デジタル通貨時代に向けての5つの提言
 1.危機感を持って通貨主権を守れ
 2.デジタル通貨政策を確立せよ
 3.銀行のビジネスモデルを、「手数料」から「データ利用」に大転換せよ
 4.個人情報主権を確立せよ
 5. デジタル通貨をきっかけとして、日本の未来を構築せよ

当シリーズでの課題の範囲と除外した課題

 本シリーズでは、BPが抱える重要な課題のうち、JBPC給付額、その財源問題、その膨大な金額の給付によって発生が予想されるインフレ問題など重要な課題・問題については、間接的・副次的に論じることはあっても、主題として取り上げることはありません。
 それらについては、別のシリーズや個別記事で対応していきます。

 また、当サイト提案は、全額専用デジタル通貨でのBP給付を目標・理想とするものですが、デジタル通貨化自体のハードルの高さや、財源問題などを現実的に考えた時、その一部は先行して現金またはこれに替わるデジタル通貨以外での給付を採用することもあり得るとしたいと思います。
 その考えの一端は、以下の記事で提示しています。(再提案も予定しています。)
全員月額7万円で始める:ベーシックインカム現実的実現法考察-1(2021/7/17)
月額7万円ベーシックインカムの条件と期待効果:ベーシックインカム現実的実現法考察-2(2021/7/18)
無理なく、漸進的・段階的に導入するベーシックインカム:ベーシックインカム現実的実現法考察-3 (2021/7/19)

ベーシック・ペンションの専用デジタル通貨化に関するこれまでの記事リスト

◆ 日本初デジタル地域通貨「白虎」開発の藤井靖史会津大客員准教授にアプローチ (2020/12/18)
ブロックチェーン専門家の藤井靖史氏が日本独自のBI、ベーシック・ペンションを評価 (2020/12/29)
なぜ日本銀行が、デジタル通貨でベーシック・ペンションを発行・支給・管理するのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-3(2021/1/22)
なぜ循環し、回収消却され、再生し、世代を継承していくベーシック・ペンションなのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-6~10(2021/1/24)
なぜベーシック・ペンションは現金ではなくデジタル通貨なのか:DX時代の必然としてのJBPC (2021/2/17)
ベーシック・ペンション実現に10年を想定する4つの理由(わけ) (2021/3/4)

ベーシック・ペンションの基礎知識としての5記事

日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)

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CBDC中央銀行デジタル通貨の特徴と強みを知る:『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』とJBPC-2(2021/12/20)


野口悠紀雄氏著『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』(2021/11/15刊・新潮社)を参考にして、当サイトで提案する日本独自のベーシックインカム、ベーシックペンション(Basic Pension, BP)の専用デジタル通貨(Japanese Basic Pension Currency, JBPC)としての給付について、技術面・運用面での課題などを再検討しています。

今回の2回目は、<第2章 CDBCの仕組みと必要性> を取り上げてCDBCの基本を確認します。

第2章 CDBCの仕組みと必要性>から

第2章 CDBCの仕組みと必要性
 1.CBDCの仕組み
 2.国民の利便性向上と金融包摂
 3.中央銀行の立場から見て、なぜデジタル通貨が必要か?
 4.複雑でコストが高い現在の仕組み

上記の構成の第2章を、以下のように内容をデジタル通貨に直接関連する事項を軸に整理し、最後にベーシック・ペンション専用デジタル通貨JBPCの在り方を付け加えることにします。

CBDC中央銀行デジタル通貨とは

Facebook(現在はMeta)がリブラの発行を発表したことから、それへの反対大合唱を行いつつ、デジタル通貨発行の検討を急加速した日本を含む欧米各国政府と中央銀行。
これは、現在の中央銀行銀行券を、中央銀行デジタル通貨(The Central Bank Degital Currency)に置き換えようとする動きと軌を一にするものです。
実際に、中国がデジタル人民元の発行・利用開始時期を来年の冬季北京五輪からとして実験と導入準備を進め、スウェーデンは「eークローナ」の実現をめざしている現状があることも認識が必要です。
なお、このCDBCは、特に価格安定化を必要とせず、自国通貨との価値が一定に保たれる「ステープルコイン」であることは、前回確認しています。

次からは、CDBCの特徴について簡潔に整理していきます。

CDBCの利用可能な範囲と限度額なしの場合の問題点

CDBCの利用範囲の方式には、以下の2種類がある。
1)小口専用
・1回の送金額に限度を設定するか、保有自体に限度額を設定する。
・利用者は主に個人となり、企業の多額決済に利用できず、銀行預金の口座振替方式が用いられる。
2)限度額なし
・企業間決済がCDBCに移行し、ネット上での送金や海外送金が、手数料ほぼゼロで行うことが可能になる。
・送金・決済問題が効率化・合理化され、現状の銀行システムは不要になる。
・CBDCを匿名性のものとした場合には、マネーロンダリングや不正取引のリスクが最大の問題となる。

口座型とトークン型

次のCDBCの形態として、次の2種類が考えられる。
1)口座型
・個人個人が中央銀行に、本人情報と関連付けられた公開ID(口座番号)が付けられた口座を持ち、保有するCDBCの残高が記録される。
・送金時に、本人が設定したパスワードを台帳管理者(中央銀行)に提示する。
・実名と異なる仮名等により上記紐付けをなくして匿名性を保つことも可能だが、不正防止のためには、本人確認の厳格化が必要になり、プライバシーの確保は困難になる。
2)トークン型
・ひとまとまりの金額を一つの「トークン」とみなし、それごとに管理する方式
・公開鍵暗号方式と呼ばれる暗号技術を用い、保有者は暗号でしか分からず、匿名性が確保される。

中央管理型CDBCと分散管理型CDBC

CDBCの管理方法としては、次の2つの方法が。
1)中央管理型
・中央銀行が唯一つの台帳を管理する方法
・リテール決済のように、膨大な取引が行われる場合、大量・高速処理が可能で、利用実績も豊富なこの方式が現実的。
2)分散管理型
・複数のコンピュータが同一の台帳を保有し、「分散型台帳技術」を用いて、それぞれが取引の検証と履歴の記録を担う方法
・ブロックチェーンと同じ機能を果たす。
・取引の確定のために、複数の検証者による合意形成が必要になり、取引の確定に時間がかかる。

CBDCデジタル通貨の必要性

今度は、なぜCDBC導入がここに来て実証実験をはじめ、各国で重視されるようになってきたのか、必要性の観点から整理してみます。

利便性を高めるCBDC

デジタル通貨が必要とされる最大の理由は、国民の利便性向上にある。
現状の紙幣や硬貨では、盗難、送金方法、送金決済費用・手数料、紙幣・硬貨の取り扱い、複雑で大きな銀行システム利用と維持、代替利用するクレジットカードの取り扱いなど、さまざまな問題がある。
これが、デジタル通貨で一気に、遥かに合理化・効率化可能になる。

CBDCが進める金融包摂とは

そこで、銀行口座を持てず金融サービスを受けられなかった人々が、金融サービスにアクセスできるようになる「金融包摂」(Financial Inclusion)の恩恵を、CBDCで受けることができるようになる。

自国通貨、共通通貨の防衛のためのCBDC

中央銀行自らがデジタル通貨あるいは仮想通貨の発行を考える理由のもう一つ重要なものは、防衛的なものである。
仮想通貨やデジタル人民元などが広く国境を超えて利用されるようになると、中央銀行が不要になる。
具体例としては、デジタル人民の使用・流通だけでなく、中国にシステムの基盤をもつ各種電子マネーの決済・使用情報とデータのすべてが、中国側に入り、個人・企業の動向を含め自由に管理・活用・統制されるリスクが挙げられる。
しかし、自らデジタル通貨を発行すれば、それを防ぐことができるわけだ。

そして、次の極めて重要な問題提起と主張が導き出されています。

中央銀行のマネーコントロール機能化、経済対策機能化のためのCDBC

また、現在の仕組みでは中央銀行はマネーをコントロールできないため、金融政策面からのCDBCの必要性・有効性を取り上げている。
すなわち、日銀が3%というインフレターゲット実現のために長期に亘ってとってきた異次元の金融緩和策がマネタリーベースは著しく増加させたが、マネーストックを増加できなかったことで未だに達成できなかったことを例に上げている。

その理由は、マネーの大部分は銀行預金で、日銀はそれを動かすことができなかったため。
しかし、CDBCを発行でき、利用限度額が設定されなければ、社会に流通するマネーをほとんどCDBC化でき、政府・日銀は、マネーストックを直接動かすことが可能に
また仮に貨幣数量的なメカニズムで物価が決まるとすれば、物価上昇率も思いのままコントロールでき、日銀は極めて強力な政策手段を手に入れることができる。

ある意味、この部分が本書でもっとも重要な内容ではないかと感じています。

現状の通貨管理システムの問題を解決するCDBC

この章の最後は、全銀システムや日銀システム、それらの伴っている「システミック・リスク」などが説明されていますが、ベーシック・ペンションにおけるシステムとは直接関係ない問題であり、以降省略させて頂きます。
包括して言えることは、そこで説明された種々の問題やリスクが、CDBCの発行とそのシステムの稼働で改善・解消されるということです。

ベーシック・ペンション専用通貨JPBCの日銀CBDCとしての在り方

ベーシック・ペンション専用デジタル通貨は、政府の委託により日銀が発行し管理するCDBCです。
但し、それは、一般的な法定通貨、ステープルコインとしてのCDBCではなく、ベーシック・ペンションとしてのみ発行・支給・流通し、管理される特殊なCDBCです。
一般的な法定通貨として、海外取引などにも利用・流通するデジタル日本円も発行されるわけです。

以下に、上記のCBDCの特徴に上げた分類から、JBPCに採用されるであろう方式を選択してみます。
・基本的には個人利用を前提とし、日銀から給付された金額に限定される「小口専用型」の性質を持つが、日銀が発行し、国内に保管・流通される総額の限度額内で企業・政府・自治体・日銀間での二次利用や回収管理も行われる「(特定条件付き)限度額なし型」
・個人個人が日銀に、個人番号と紐付けした口座を開設し活用する「口座型」
・日銀が全管理を担う「中央管理型」
という性質をもつ、特殊なCDBCになると、現状では申し上げておきたいと思います。

また利便性については、専用JBPCに限定されたは範囲・基準での利便性が最大の特徴の一つであり、そこでの金融包摂も間違いない特徴になります。
自国通貨としての特性は、JBPCが本来持つものであることは、国内でのみ流通し、利用できるということに集約され、対外的な問題の枠外にあることもいうまでもありません。
但し、JBPCを除く、一般的な法定通貨の発行・流通と関係する経済動向、外国為替市場動向との関係については、決して無関係というわけではありません。
ただ、先述した、筆者の青色の背景で示した指摘が、JBPCと法定のデジタル円、CDBCトータルでの政策選択によりコントロールできる余地があり、検討に値すると思われるとしておくことにします。


次回は、<第4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える>を参考にして、ベーシック・ペンション専用デジタル通貨JBPCを考えます。

当シリーズでの課題の範囲と除外した課題

 なお、繰り返しになりますが、この野口氏著『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』を用いての本シリーズでは、BPが抱える重要な課題のうち、JBPC給付額、その財源問題、その膨大な金額の給付によって発生が予想されるインフレ問題など重要な課題・問題については、間接的・副次的に論じることはあっても、主題として取り上げることはありません。
 それらについては、別のシリーズや個別記事で対応していきます。

 また、当サイト提案は、全額専用デジタル通貨でのBP給付を目標・理想とするものですが、デジタル通貨化自体のハードルの高さや、財源問題などを現実的に考えた時、その一部は先行して現金またはこれに替わるデジタル通貨以外での給付を採用することもあり得るとしたいと思います。
 その考えの一端は、以下の記事で提示しています。

全員月額7万円で始める:ベーシックインカム現実的実現法考察-1(2021/7/17)
月額7万円ベーシックインカムの条件と期待効果:ベーシックインカム現実的実現法考察-2(2021/7/18)
無理なく、漸進的・段階的に導入するベーシックインカム:ベーシックインカム現実的実現法考察-3 (2021/7/19)

CBDCで市中銀行は不要になる?:『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』とJBPC-3(2021/12/21)


今回は第3回目。<第4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える> を参考にして作業を進めます。

第4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える >から

第4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える
 1.中央銀行によるデジタル通貨発行の競争が加速
 2.銀行預金が流出するという大問題
 3.銀行預金の流出への対処法
 4.プライバシー問題にどう対処するか?
 5.中央銀行による通貨発行の独占は必要か?望ましいか?

上記の構成の第4章において、初めの欧州等各国のデジタル通貨発行をめぐる競争については、本稿との関係は薄いため省略し、以下の課題に絞って整理してみます。

信用創造をめぐる課題と銀行預金と銀行自体の消滅?

マネー創造の2つの方法。
一つは、銀行が国債を買い上げることでマネーが創造されるもの。
もう一つは、銀行が行う「信用創造」によるもの。
筆者はこう説明します。

銀行は、増加した預金の一部で貸出を行うことで大部分が預金となって戻り、さらにその一部を貸出に用いる、という過程により、元の預金増の数倍の預金増が実現される。
これが信用創造のプロセス。


デジタル通貨が現実化すれば、その銀行の信用創造システムが変わらざるをえなくなる。
この課題についての説明部分を簡略化しました。

電子マネー、仮想通貨、デジタル通貨が、銀行の信用創造を制約・不能に?

電子マネーを持つために銀行預金口座の現金を使用すると預金残高が減少する。
その電子マネーが使われなければ、あるいは投資などに転用されれば、銀行預金残高は減少したままになる。
仮想通貨もデジタル通貨も、これに換えるために現金預金が降ろされ、その預金は銀行口座に戻ることなく流通し、銀行口座残高は減少したまま。
そのため、信用創造力も低下し、ひいては信用創造不可能となり、銀行不要論に行き着くことにもなりかねない。
実際に、預金準備率を100%とすべきという考え方も当然あり、この場合自己資本の範囲内での貸出しかできず、信用創造禁止に近い状態を意味することになるわけです。

CBDCで銀行不要に

仮に仮想通貨(リブラ改め)ディエムが、グローバルに流通すると、膨大な額の現預金がディエムに交換され、市中銀行の預金が戻らなくなります。
極端を言えば、市中銀行は要らなくなる。
これと同様、中央銀行が自ら口座を開設し、CBDCを発行し、この口座で決済・送金などの管理を統括すれば、やはり市中銀行は不要になります。
ただ、CBDCの送金額や保有額に限度を設定すれば回避できますが。
しかし、諸外国でCBDCが発行されれば、そうはいかなくなるわけで、やはりCDBCの威力・影響力は甚大なものと認識しておく必要があります。

では、CBDCの1種であるJBPC発行時に市中銀行はどうなるか。
後述します。

この他、CBDC発行時に銀行預金の流出を止める方法についての記述もありますが、やはりJBPCとの関連性はここでは触れる必要がないため省略します。

なお、信用創造に関する記事として以下を投稿していますのでご参考まで。
知らなかった、民間銀行の濡れ手で粟の信用創造:『資本主義から脱却せよ』から考える社会経済システム-2(2021/5/9)
信用創造廃止と貨幣発行公有化で、資本主義と社会はどうなるのか:『資本主義から脱却せよ』から考える社会経済システム-3(2021/5/11)

次にこの章の展開順としては入れ替わりますが、中央銀行の通貨発行権に関する説明部分に移ります。

中央銀行の通貨発行権をめぐる課題

中央銀行のマネー発行独占権について

先述の市中銀行のマネー創造機能と関係した課題として、中央銀行が通貨の発行権を独占することの適否について述べています。
日本銀行券を印刷して発行する権利は日銀だけの専権事項と当たり前に思っていますが、市中銀行も信用創造という方法で紙幣は刷らないけれど、マネーを市中に増やす機能、言わば権利を持っている。
当初こうした信用創造という用語と事実を私は理解できませんでした。
銀行預金残高の方が、中央銀行券の発行残高よりも圧倒的に多いということも。

「預金準備制度」に基づく信用創造として、一応の制約はありますが、その準備比率が著しく低く、極めて形式的であるため、経済成長期やバブル期には、この信用創造モードの高まりでインフレ懸念が拡大するリスクが伴うわけです。

財政ファイナンスをめぐる課題

こうしたマネーの発行をめぐる課題を考えるに当たって、「財政ファイナンス」という概念・機能を用いて説明していますが、私流の解釈・理解で簡単に表現しました。
マネーの発行を中央銀行が独占できれば、マネーで財政支出を賄うことができるわけですが、これには当然功罪両面があります。
中央銀行と中央政府の専権としての財政支出フリー、通貨発行独占権は、政府が良からぬ支出・使途に走るリスクをイメージするのは容易です。
しかし、良い使い方をすれば、素晴らしい権利行使と評価され、受け入れられるわけです。

中央銀行デジタル通貨発行におけるプライバシー問題

順序を入れ替えて、最後に、CBDC導入時の「プライバシー」問題を追加事項として持ってきました。
但し、匿名性、プライバシーに関する課題は、第1回目の記事で取り上げています。

それはCBDCだけに絞っての扱いではありませんでしたが、本質的には同質の問題です。
従い、その記事内にある
<ブロックチェーンと仮想通貨におけるプライバシー(匿名性)と管理>
<ベーシック・ペンションにおけるプライバシーと管理>

という項の部分でご確認ください。



CBDCの一種であるベーシック・ペンション専用デジタル通貨JBPCの在り方

今回の上記内容とベーシック・ペンションJBPCとを関連させたいくつかの課題について、本稿のまとめとして以下書き加えてみます。

まず、現状の市中銀行の信用創造システムや、果たしている機能との関係について。
専用デジタル通貨ベーシック・ペンションJBPCを提案する者としては、JBPCが発行されても、現状の日銀の日銀券発行権に基づく法定通貨は従来どおりであり、市中銀行に拠る信用創造システムも存続するという立場です。
(現状の預金準備率に拠る市中銀行の信用創造制度には不満がありますが。)
しかし、本書のテーマである一般的な中央銀行デジタル円通貨が日銀により発行される状況になった場合には、金融システムの何らかの改革は必要と考えます。

次に「財政ファイナンス」との関連です。
ベーシック・ペンションは、政府の一般会計や特別会計の財源に頼らず、すなわち税・保険料や国債に頼ることなく、唯一日本銀行の(デジタル)通貨発行権に基づき国家が発行し支給し、流通・循環・回収・消却する財政フリーマネーとしています。
従い、懸念される最も重要な課題は、膨大な金額(年間100~200兆円規模)のJBPCが発行されることによるインフレ発生リスクとその対策です。
この問題については、これまでも取り上げてきていますが未解決であり、今後も別稿で継続して取り上げていきます。

最後のプライバシー問題は、先の記事で確認頂ければと思います。


今回は、本章のかなりの内容を割愛しました。
中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える>というテーマの章。
当サイト提案の「CBDCベーシック・ペンションデジタル通貨JBPC」も、まさに、社会の基本を変える社会保障制度改革、社会経済システム構築をめざすものです。

従い、次回取り上げるのは<第6章「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁>ですが、 これを<「ベーシック・ペンションデジタル通貨JBPC」の前に立ちはだかる厚い壁>と読み替えて臨むべきかと思っています。
果たしてどうなるでしょうか?

金融財政システム、社会経済システム改革との一体化が必要なCBDC導入:『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』とJBPC-4(2021/12/22)


今回は第4回目。
第6章「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁> を参考にして、日本におけるCBDC発行問題を、JBPC発行と重ね合わせて考えます。

第6章「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁>から

第6章 「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁
 1.「デジタル円」は動き出すのか?
 2.日本はキャッシュレス後進国
 3.手数料収入を当てにするメガバンクのデジタル通貨戦略は間違い
 4.乱立する日本の電子マネー
 5.「デジタル円」の利用率をゼロにできるかの?

以上の構成の本章を少し整理して、以下の順で確認していきます。

デジタル円、実証実験中等国内動向からの可能性

リブラ(ディエムに変更)や中国のデジタル人民元の動きに影響されて、欧米そして日本の中央銀行のデジタル通貨の研究・実証実験が加速。
予定では、日本も今年から何らかの実験が始まっているはずだ。
しかし日銀は「日本でCBDCを発行する計画はない」と繰り返し強調している、という。
といいつつも、「デジタル円」について、2020年以来の以下の動向を挙げている。

・欧州中央銀行と「分散型台帳(ブロックチェーン)」に関する共同調査プロジェクト「プロジェクト・ステラ」の取り組み(2020年2月第4フェーズ調査結果公表)
・2020年1月主要中央銀行によるCBDCの活用可能性研究のためのグループ設立発表
・6月CBDC等の実現をめざす検討会発足。3メガバンク、JR東日本、NTTグループ等参加。日銀・政府関係各省庁等オブザーバー参加。2022年実現をめざす。
・7月日銀「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」レポート発表
・2021年3月「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」第1回会合開催。金融庁、財務省、日銀、全銀協等参加

何よりも、2020年7月閣議決定の2020年度骨太方針「経済財政運営と改革の基本方針」の中で以下の言及が。
「中央銀行デジタル通貨については、日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う。」
そして

「デジタル円」を発行するかどうかかは、日銀ではなく政府が判断する。
そのため、デジタル通貨を認める際には日銀法の改正が想定される。
骨太の方針で政府の関与を示したことで、具体的に一歩進んだと考えられる。

こう筆者は付け加えています。

次は、日本の電子マネー乱立状況を軸にしての論。

キャッシュレス後進国がデジタル通貨発行にはフォロー

電子マネーが乱立し、コンビニや種々の業態店舗でも多種類の電子マネーの利用受け入れをせざるを得なくなっている状況ですが、未だに日本のキャッシュレス比率は30%そこそこ。
それだけに国としても2025年までには40%レベル、将来的には80%をめざすとしており、またコロナで現金を扱うことを回避する傾向が大きく強まったことも後押しすることは間違いない。
ただ、受け入れ側の本音としては、クレジットカードの手数料負担は大きく、電子マネーもそれなりの手数料を負担しなければいけないことが悩みです。

こうした事情から、CBDCが発行されれば、一気にキャッシュレス社会が実現することは間違いありません。
ただCBDCでは手数料が無料になるか、無料にできるかは現状なんとも言えませんが。

メガバンクのデジタル通貨発行計画が頓挫した理由

加えて、2016年以降のMUFG(三菱UJフィナンシャル・グループ)によるデジタル通貨MUFGコイン発行計画、みずほ銀行のデジタル通貨JJコイン発行に基づくスマホ決済サービスJコインペイ導入を筆頭とした地方銀行等による「銀行ペイ」などの事例も取り上げています。
しかし、そのどれも、他の電子マネーの影に隠れてぱっとしません。
その理由は、多くが手数料収入を当てにしてのものであるためといいます。
まあ信用創造による濡れ手で泡のビジネスにどっぷり浸かってきた銀行が考えるビジネスとしては、そのレベルでしょう。

乱立電子マネー対CBDC

実は、現状乱立する電子マネーを統合するシステムとして、インド決済公社が開発したUPI(統合決済インターフェース)があり、その活用が検討されても良いとしています。
仮にそのシステムを利用しても、群雄割拠の内部事情が変わるわけではないため、根本的な社会経済システムの改革がもたらされるわけではありません。

話を戻して、「CBDCは、金融機関などが中央銀行と利用者の間に入る二重構造になる可能性が高い」と筆者は指摘し、このとき何が仲介機関になるかが問題であり、その結果によって現状の多種多様な電子マネーが大きな影響を受けるといいます。
果たして現状リテール通貨を担当する銀行か、それとも電子マネーなどを提供しているフィンテック企業か。
すなわち、現在のQR決済電子マネーのいくつかが、デジタル円のリテール部分を担う仲介業者になる可能性もあるといってるのです。

筆者は面白がって、候補企業や業種、候補電子マネー等を次から次に引き出して可能性を論じているのですが、どれも本気ではない、というか、落とし所を明示するのはまだ時期尚早ということなのでしょうか。

デジタル円利用料ゼロであるべきCBDCとCBDC発行のさまざまな障害

電子マネーにしても、銀行が考えるデジタル通貨にしても、基本的には利益獲得を目的とする民間企業が行う事業です。
利用料ゼロは実際不可能に近く、仮にそうすればその代わりにコストを吸収する仕組み・仕掛けが欠かせません。
こうなるとやはり国もしくは中央銀行がその無料事業を行うのが自然ですし、現在の法定通貨の発行管理システムと同じ領域・範疇での取り組みがCBDCにおいて行われることになるでしょう。

しかし、そのCBDC導入を消極的にさせるには大きな影響が予想され、さまざまな障害、乗り越えるべき壁が立ちはだかっている。
最後に示した例は以下の事項です。
・地方銀行等からの預金流出
・使いにくい乱立する電子マネー
・セクリティ面での不安

そして日本独自の問題点を挙げてこうまとめています。
・従来の銀行システムがレガシーとなって、新しい通貨の登場を阻止する可能性がある。
・メインフレームコンピュータが障害となって、分散型のコンピュータシステムにうまく移行できなかったことと同様の可能性がある。

どうも、スッキリ、はっきりしないまとめに終わってしまった感があります。
問題が大きく、壁が厚く高いというからには、それを乗り越え、破壊する意欲・気力と方法を持ち合わせているべきなのです。
要するに、21世紀の日本の社会経済システムの大改革を実現するきっかけとなりうる中央銀行デジタル通貨発行です。

ベーシック・ペンション専用デジタル通貨JBPC発行に立ちはだかる壁

ひとつ、課題を忘れていました。

本章で論じられたCBDC発行の壁は、JBPCの発行の壁と共通あるいは同一のものでしょうか。
その根本は、既存の市中銀行の位置付け・存在意義を認め、温存する立場か、その改革を想定してCBDCを考え、実現をめざす立場かという異なる前提との関わっています。

JBPCは、国家のデジタル通貨の一種ですが、本書でいう「デジタル円」ではありません。
国内でのみ利用でき流通し、一定期限内に回収され、使途が限定される特殊な「JBPC円」です。
上述した筆者に拠るデジタル円発行上の課題が解決される見通しが立てば、JBPCの実現性も高まるでしょう。
もしJBPCがデジタル円に先行して導入され、当面現状の通貨システムが継続されれば、ここまで筆者が指摘した課題の多くは、不安・懸念が不要になります。
一方、先に日銀CBDCが実現されるのは、ここで問題とされていた課題の先行きが見通せるようになった時。

それはそれであり、JBPCは、JBPC独自の乗り越えるべき壁・課題は厳として存在します。
技術的な課題は、実証実験が進められるプロセスで、あるいはデジタル円が実現可能になれば自ずとクリアできるでしょう。
問題は、JBPCそのものが認知され、導入が認められるかどうかです。
それをクリアするためには、政治イシューにされること、国会の場で法案が提出され、議論され採決の場・機会にまで持ち込まれることが必須です。
すなわち、その法案を提案する政党・政治グループが出現することで初めて、実現の可能性が出てくるのです。
そう認められる内容のベーシック・ペンション案、その構想・計画を粘り強く検討し、提案し、訴え続けること。
それに叶う内容の必須条件・基準として、「中央銀行デジタル通貨」方式があるわけです。


まあ、本書での結論は少し先のこと。
次回の< 第7章 パラダイムの転換に成功した社会が未来を拓く><終章 デジタル通貨時代に向けての5つの提言 >に期待、と書こうと思いましたが、その構成を見ると・・・。
ベテラン学者さんも、現状の問題点の指摘はできても、往々にして抜本的な改革提言・提案はできない人の方が圧倒的に多いので、どうということはないですが。
いずれにしても次回、最終回に臨みます。

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デジタル円とデジタルJBPC並立による中央銀行デジタル通貨CBDC体制へ:『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』とJBPC-5(総括)(2021/12/23)


今回は第5回、最終回になります。

第7章 パラダイムの転換に成功した社会が未来を拓く>から

第7章 パラダイムの転換に成功した社会が未来を拓く
 1.デジタル人民元のインパクト
 2.スゥェーデンやユーロはCBDC導入に向かう
 3.デジタルドルはどうなるか?
 4.「ディエム」はどうなるのか?
 5.CBDCはパラダイムの転換

 以上の構成の<第7章>ですが、ほとんどは、ここまでの各章で提起してきたさまざまな仮想通貨、デジタル通貨をめぐる問題点・課題を整理したものと言えます。
 まずそれらを小見出しの表現をピックアップして、整理してみました。

各国のCBDCをめぐる課題・問題点

1)導入間近とされるデジタル人民元の影響力と大きな警戒感
2)スウェーデンCBDC、デジタルユーロCBDC導入動向をめぐる思惑
 ・民間デジタル決済への警戒
 ・銀行預金流出懸念によるCBDC反対論
3)デジタルドルをめぐるFRB等の動向
 ・金融包摂からの賛成論
 ・サイバー攻撃、コスト懸念からの反対論
 ・強まるテザー、USDコイン等ステイプルコイン規制論
4)ディエムの今後の展開予想
 ・デジタル人民元の対抗策となりうるディエム
 ・実現すれば金融取引、金融政策に多大な影響
 ・先行き不明なディエム

CBDCがもたらすパラダイム転換とは

次の本章のタイトルにある「パラダイム転換」について。
学者や評論家が好んで使う「パラダイム転換」という用語。
私には、その元来の意味不明性から、過去の用語になっているという認識ですが、野口氏が言う「パラダイム転換」とはどういうものか。

項目の小見出しを順に拾っていくと
1)銀行がナローバンクになり、CBDCの仲介だけを行う
2)銀行がナローバンクになることの問題点
3)民間のデジタルマネーが、中央銀行と独立に発行される可能性も
4)中央銀行の役割のうち何が残るか?
5)個人情報を把握されるなら、国より民間がよい?
となっています。

どうやらここでのパラダイム転換は、CBDCは、民間銀行大転換をもたらすことと、当然ながら、伴って中央銀行の役割・機能も大きく変わることを意味します。
それに付随する課題としての個人情報問題と民間のデジタルマネーの変化・変革があります。
前者は、現在も議論されている内容が収斂されていくでしょう。
後者については、野口氏の予想が描かれています。

パラダイム転換は社会、個人、企業に何をもたらすか?

拓かれる未来とはどんな未来なのか。
それについては、触れられていません。
中央銀行デジタル通貨CBDCが、何をどう変革し、どういう望ましい未来を構築することに寄与するのか。
金融機関の変化・変革の予想はある程度描かれていましたが、実社会における個人と企業の生活、活動等にどのようなパラダイム転換をもたらすかには至りませんでした。
それは、本書の目的とするものではない、ということになるのでしょうか。

では、<終章>でそれらの疑問に応えてくれるかどうかも含めて、臨むことにします。

終章 デジタル通貨時代に向けての5つの提言 >から

終 章 デジタル通貨時代に向けての5つの提言
 1.危機感を持って通貨主権を守れ
 2.デジタル通貨政策を確立せよ
 3.銀行のビジネスモデルを、「手数料」から「データ利用」に大転換せよ
 4.個人情報主権を確立せよ
 5. デジタル通貨をきっかけとして、日本の未来を構築せよ

 以上の構成からなる<終章>です。
 しかし、ここまでの章と異なり、随分簡潔な提言に収めています。
 端的に言えば、具体的改革案の提示はなく、総論、抽象論にとどまる、非常に残念な総括(概括)に終わってしまいました。
 一応、以下に駆け足で整理してみました。

「危機感を持って通貨主権を守れ」と誰に訴えるのか

 野口氏のここでの提起は以下。

日本では、仮想通貨の価格変動に乗じて値上がり益を得ようと狂奔する人は多いが、デジタル通貨が経済や社会の基本を変えるという認識を持つ人は少ない。
日本がその中で取り残されることに対して危機感を持つ人はさらに少ない。
この問題への対応を誤れば、日本は通貨主権を失い、日本人や企業の送金情報が外国政府に筒抜けになることさえありうる。

 仮想通貨に関心がある人をここで持ち出して比較することは無意味でしょう。
 野口氏が訴えかけたい日本人は一体誰なのか。
 そこを絞り込み、明確にした上で、理解を得るための方法・方策を具体的に提起すべきでしょう。
 本書がそのための手引書とされるとしても、一般人の私たちだけが理解して、いきなり何かしらの力になることは無理でしょう。


「デジタル通貨政策を確立せよ」と誰に主張するのか

日本は、これまで一貫してデジタル通貨政策がなく、単にキャッシュレス率の引き上げだけを考えてきており、標準化・統合化の努力を怠ってきた。
これまでのキャッシュレス・ポイント還元事業、マイナポイント事業などは、単にキャッシュレスを一時的な補助や比率のの向上を図るレベルにとどまるもの。
加えて、電子マネーの乱立や、高い手数料の放置などは電子マネーの構造を適正化する政策がなかったことに拠る。
こうしたことから、どのようなデジタル通貨の仕組みを確立するかという観点からの政策展開が必要だ。

 やはり、この主張・提起も、一体誰に向けてのものか、漠としています。
 そもそも本書では中央銀行デジタル通貨CBDCと言っているのですから、あたかも電子マネーも仮想通貨も日銀マターかのように思わせるのですが、実態・実際としては、その3つの所管がそれぞれ異なるように思えます。
 となると、件のデジタル庁のお出ましかとなるか。
 それもおかしな話です。
 財務省が電子マネーに関わるのもおかしな話。
 仮想通貨には金融庁が規制の観点から大きく関与したのですが、デジタル通貨システムとして捉えるとありえない話です。
 結局、首相と内閣府官房のガバナンス及びマネジメントというところに落ち着かせざるを得なくなる。
 そういう政治・行政の在り方をどうすべき、という視点からの提起が不可欠です。
 

「銀行のビジネスモデルを、「手数料」から「データ利用」に大転換せよ」について

 この項の内容・概要はここでは省略し、小見出しの転載にとどめます。
 これは、銀行に対する提案・提言と捉えてよいかと思いますが、市中銀行がデジタル通貨の発行母体としてありうるのかどうかという課題の方を先に決着させるべきでしょう。
 市中銀行のデジタル通貨との関係を考えれば、むしろ将来的に信用創造をどうするのか、という議論と政策変更を課題とすべきです。
 いうならば、5つの提言の中で、この事項だけが異質なもので、ここでは馴染まないものです。


「個人情報主権を確立せよ」について

 個人情報、プライバシーの秘匿性、匿名性とその保護問題については、ここで繰り返すことは省略します。
 この問題については、ほぼグローバルレベルで方針・方向性が共通化・共有化されつつありますが、解決方法が単純に唯一のものとできないことも共通の悩みです。
 ルール化・法律化は、ある意味簡単ですが、むしろセキュリティシステム自体の強度・脆弱性の問題が、常について回るでしょう。
 情報を収集し管理するサーバーの国外への持ち出しや設置を違法とすることを共通ルールにする流れではありますが、国内だけに置いたとしてもセキュリティ問題がなくなる保証はありません。
 文面による主権の確立と現実での守秘管理は、常に一体であることが保証できないことも想定したうえでどうするか、どうすべきかを多重・多層的に考え、システム化する必要があるわけです。

 なお、他の記事で書きましたが、ベーシック・ペンションのデジタル通貨JBPCは、日銀の口座で管理され、その利用データは、国内の生活基礎産業及び需要供給体制の基盤整備・確立など、社会経済システム改革と改善に活用することを想定しています。
 個々人の利用実績・実態・情報は、そのために国家及び自治体レベルで活用されることを前提としています。


「デジタル通貨をきっかけとして、日本の未来を構築せよ」に対して

 ベーシック・ペンション用デジタル通貨JBPCは、国民の権利としての基本的人権、最低限度の生活保障を基盤とした多様な方針・目的のもとに規定し、支給する生活基礎年金です。
 その制度・システム自体が社会経済システム改革として機能するものであり、デジタル通貨化もその中の必須の要素なのです。

 一方、本書の本論におけるCBDC、デジタル円は、現状の紙幣と硬貨による法定通貨のデジタル通貨への転換です。
 従い、当然、現状の法定通貨「円」における中央銀行と市中銀行、中央銀行と政府、そして国民及び企業活動との関係における大転換が、好むと好まざるとにかかわらず行われます。
 問題は、それを絶対的な条件として認め、これまでの既得権等を一端廃し、ゼロから、一から新しい金融・財政システム、社会経済システムを構築するという合意形成と共通認識化をしっかり行うことができるか、にあります。

 まさに日本の未来がどう変わるか、どう変革するかの議論を始める必要があるわけです。
 

ベーシック・ペンションJBPCから俯瞰した『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』総括


 繰り返しになりますが、当然、本書はベーシックインカムについて書かれた書ではありません。
 日本独自のベーシックインカムを、ベーシック・ペンションと名付け、中央銀行が発行する専用デジタル通貨JBPCで実現することを提案していることから、デジタル通貨の可能性や技術的、社会経済的課題について、本書を参考にすることが目的・狙いでした。

 本書の内容を参考にしての確認事項、残る課題などについては、冒頭紹介の個別記事でメモしています。
 ここでは、最後に、次の見出しを総括提案として掲げ、若干の捕捉説明を加えておくことにします。

2040年、デジタル円とデジタルJBPC並立による日本独自の中央銀行CBDC体制へ

 専用デジタル通貨JBPCでのベーシック・ペンションの支給は、中央銀行である日本銀行が発行するデジタル通貨CBDCの一種です。 
 当然、デジタル通貨の実証実験を経て技術的課題や安全性のクリア、関係する諸制度・法律の改定作業なども経ての具体化が前提です。
 すなわち、この現状の日本円のデジタル通貨化が実現可能となり、先行して導入された後、もう一つ別の目的・機能を持つCBDCが、JBPCデジタル通貨として導入・発行されることになります。
 2種類のCBDCが並立し、並行して発行・運用・管理されるわけです。
 但し、そのシステムはまったく異なるものです。

 JBPCデジタル通貨は、日本国内で生活する日本人だけに発行され、日本国内だけで利用され、流通し、回収され、一定期間内に消却される一種の地域限定通貨です。
 グローバル社会での利用・流通を前提としたオーソドックスな中央銀行デジタル法定通貨デジタル円とはまったく異なるもの。
 従い、デジタル通貨であるということを除けば、その運用管理システムがまったく異なることを確認しておきたいと思います。

 また現実を考えると、他でも述べてきたように、ベーシック・ペンションの早期実現を図るためには、目標とする金額の一部を先行して給付することとし、初めは現金で、あるいは電子マネー的なツール及びシステムによって給付する。
 そして、デジタル通貨システムが完成した後に、デジタルJBPCに切り替えて全額支給することが望ましいと考えていることも再度申し上げておきます。

 なお、今回のシリーズでは、その目的から、<第3章 デジタル人民元は大きな脅威となる>< 第5章 ビットコイン創始者は「国の管理から自由な通貨」を求めたは直接取り上げませんでした。
 また第1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨 についても直接「リブラ」に関する内容も取り上げていません。
 ご理解頂きたくお願い申し上げます。

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本稿で検討したデジタル通貨給付の構想は、その後の検討の中で、通貨設計と制度統合の問題として再整理されることになります。

現在では、ベーシックインカムを単なる給付制度としてではなく、通貨・財政・社会制度を一体として再設計する枠組みとして、「シンベーシックインカム2050」の構想を提示しています。

その具体的な内容については、以下の記事において整理しています。

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