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専門書・専門家シリーズ記事

ガイ・スタンディング著『ベーシックインカムへの道』を読み解く|13記事統合による全体像と核心:旧サイト記事集約移管シリーズ-1

今回は第11回。
「第10章 ベーシックインカムと開発」を取り上げます。

第10章 ベーシックインカムと開発
 ・ターゲティング指向と選別指向
 ・条件付き現金給付と無条件現金給付
 ・現金給付プログラムから学べること
 ・試験プロジェクト
    ナミビア/インド
 ・財源の問題
 ・補助金からベーシックインカムへ
 ・人道援助の手段として
 ・紛争回避の手段として
 ・途上国のほうが有利?


本章の構成は、上記のとおりです。
最初にこの「ベーシックインカムと開発」というテーマを見たときには、どんな内容かイメージできなかったのですが、本章冒頭の以下の記述で、その意図が理解でき、かつ、大枠での話の筋が想像可能になりました。

 近年、途上国で「条件付き現金給付」(多くは多国間援助が財源)や、貧困世帯の高齢者や子どもを主な対象とする「無条件現金給付」が実施され始めた。
外国政府や、国連などの国際機関、NGO、慈善団体の資金援助により、広い意味でのベーシックインカムの試験プロジェクトも実施されている。
 世界銀行推計によると、2014年時点で、130の途上国の7億2000万人が何らかの現金給付プログラムの対象になっている。アフリカの48ヶ国中、無条件現金給付実施国は40ヶ国に上る。


いうならば、開発途上国の開発支援のための条件付きもしくは無条件現金給付を、ベーシックインカム実験プログラムとみなして、そのあり方を事例紹介するのが目的というわけです。
率直に申し上げて、当事国主体ではなく(一応この形式を取ることがある場合でも)、他国や国際機関が主体もしくは勧奨機関となるこうした支援プログラムは、例え実験的試みではあっても、ベーシックインカムがもつ本質とは掛け離れたプログラムであり、当事国の社会経済システムとして位置付けられるものではないと考えます。
なぜなら、本来ベーシックインカムは、貧困対策だけのために提案・導入されるものではありません。
他の社会保障制度がある程度自国内で整備され、経済的基盤も成長途上国等として整備・拡充されており、国民生活や地域住民生活上一定の所得レベルが保持され維持可能な政治的・財政的基盤があることが条件と考えます。
そうした基盤があるにも拘わらず多様な問題を抱えており、それらの改善・克服のためにベーシックインカムの導入の検討、是非の検討が行われることが望ましい。
私の思うところをこう提起させて頂いた上で、上記構成におおよそ従って、ガイ氏の論述を概括していきます。

私の懸念に実は答えているかのような表現として、文中から引用したのがこの見出し。
そして、その移行を妨げる4つの要素とは以下。
1)ターゲティング指向:貧困者だけに絞って現金を給付すべき
2)選別指向:特定の属性の人たちを優先的に対象とすべき
3)条件指向:特定の行動を受給条件とすべき
4)ランダム化指向:ランダム化比較試験による「エビデンス(科学的根拠)」の裏付けがある政策のみを実行すべき

この問題提起から、まずこの2種類の考え方についての問題点をガイ氏は指摘。
ターゲティング及び選別方式は、世帯単位の資力調査、代数資力調査(所得と相関関係がある他の要素から間接的に所得・資力を推量する手法)、地域単位・コミュニティ単位・自己ターゲティング等による何らかの「貧困ライン」を基準として対象者を決定する。
が、この基準は恣意的で客観性を欠くとして、インドでの実験例を示しつつ、この方法が「貧困の罠」を作り出すこと、資力調査は行政コストがかさむこと等も示し反対している。
結局、ここでのガイ氏の主張は、「すべての人に給付する制度のほうが、貧困者だけに給付する制度よりも貧困の削減と不平等の改善に効果を発揮する」と、これまでの繰り返し。
もうこれで、本章の同氏の結論は出ているわけ。
なお、もう一つのランダム化比較試験については、現金給付プログラムに関する膨大な量の研究の多くを占めており、同主義者たちがこの方法だけが「エビデンス」に基づく政策の土台になりうる科学的方法論と主張するが、他の手法によっても同様の内容や信憑性のある結論を得られる、とガイ氏。

次に課題としたのが、「条件付き現金給付」と「無条件現金給付」、どちらが望ましいかの比較。
60ヶ国以上の途上国で採用されている「条件付き給付」も、貧困者対象がほとんど。
そこでは、子どもを通学させていること、定期的な健康診断・予防接種などを条件に母親に現金給付しする。
実施国がその2倍に上る「無条件現金給付」の場合は、高齢者向け年金や子ども手当など特定の属性に対象をしぼりかつ貧困者限定がほとんどと。
行動面の条件を付ける場合の問題も含め、結局、先述のガイ氏の結論に帰着する。
初めから、途上国の「貧困者」を対象としたプログラムであることの限界は想定されるところであり、ガイ氏のここでの「現金給付プログラム」研究の統計上の効果は、次の項目。
・所得貧困の緩和、食費・栄養否支出の増加、学校への登校率の向上、子どもの認知的発達の改善、医療サービスの利用増加、貯蓄を用いた(特に家畜と農機具への投資)の拡大、地域経済のささやかな成長。

ここまでのターゲティング指向・選別指向・条件指向の現金給付プロジェクトではない、個人に対し、無条件に、定期的に現金を配る、真のベーシックインカムの2つの試験プロジェクトが、途上国、ナミビアとインドで実施されたことを、次に紹介している。
ただ、それが短期間にとどまるものであったため、実際にはBIとは異なるものだった。

(1)ナミビアの例
 概要:2008~09年。小村オトジベロオミタラの年金受給60歳以上を除く村民全員1000人対象。月額100ナミビア・ドル=12米ドル支給。貧困ラインの約3分の1相当額。実施主体:ナミビア・ベーシックインカム・グラント連合、寄付を財源)
 結果:先述の貧困者対象の現金給付実験プログラムとほぼ同様の効果。他、村民の自発的組織活動「ベーシックインカム助言委員会」による集団行動に基づく効果も。
 その後の顛末:2015年12月、同国大統領がBIを対策戦略として採用を宣言したが、2016年6月フードバンク・プログラム開始により、BIは棚上げ同様に。

(2)インドの例
 概要:2009年~13年。女性自営労働者協会主管による以下の3つの試験プロジェクト。国連開発計画、後、ユニセフが資金拠出。
1)西デリーの「BPL(貧困ライン以下)カード」保有の数百世帯に、従来の「公共配給システム」を通じて現物給付を受けるか、同等の価値のベーシックインカムの毎月受給かを選択。当初半数BI選択後、残りの多くもBIに変更を申し出。栄養状態・食習慣が改善。
2)マディア・ブラデシュ州8村約6000人の男性・女性・子どもに、家族のBI受給額合計が貧困世帯平均世帯所得の30%相当の金額のベーシックインカムを1年半給付。
受給前及び受給しない他の12村と比較。
 4つの成果:①賢明な活用と生活改善効果 ②社会の公平性の高まり ③仕事と労働量の増加 ④人々を解放 ⇒ 村のあり方を一変
3)ある少数民族の村を対象に、すべての住民にBIを12ヶ月間給付。他の給付しない村と比較。

ここまでの論述は、既に当シリーズ第5回のテーマであった「貧困、不平等、不安定の緩和」に関する以下の記事でも扱ったものといえます。

途上国に対する実験的ベーシックインカムといわれる現金給付プログラムの財源のほとんどは国際機関からの拠出や寄付であり、低所得国が自らそのための予算を賄うことは困難とされる。
それに対して、ガイ氏は、給付水準は予算で可能な範囲から始め、可能ならば少しずつ増やせばよく、政治的意志さえあれば、次の4つの方法いずれかで財源は手当できると。
1)増税:ほとんどの途上国は税制度が整備されておらず、徴税率、所得税が非常に低い故
2)他の支出項目からの予算の付け替え
3)政府系ファンドの活用
4)国際援助や民間寄付の活用

こうした提案は、以下の第9回記事でテーマとした「財源問題」の章で述べられたことの繰り返しだ。
しかし問題は、そうした政治的意志決定が可能な政治体制が形成できるかどうか、安定した政治体制が維持できるかどうかにあり、ガイ氏の理想論は通用しないことは明らかだ。
⇒ 多くの財源論が展開されてきた欧米で未だ実現しないベーシックインカムのなぜ?:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-9(2022/12/6)
 

ナミビア、インドにおける主として貧困層向けの限定的実験的ベーシックインカムの他の例を、引き続き紹介している。
だが、エジプト、インドネシア、タイなどにおける、国際金融機関の強い要請に基づく、食料援助・燃料補助に替わる低所得者向け現金給付導入の試みはうまくいっていないという。

1)イランの燃料補助金から現金給付移行

そうしたなか、イランの具体的な2010年12月に行った、エネルギーコスト削減のための補助金支出削減に替えてすべての世帯への無条件の定期的な現金給付を開始。
但し、所得税課税対象者には税務申告を義務付けしたため、受給を申込まない者が多数。
結局成人の3分の2が受給し、物価上昇による負担増を上回る給付金を得、特に地方部で貧困と不平等が大幅に緩和された。
当初インフレが一挙に加速したが、政府の一時的措置により抑制され、現金給付コストは、以前の燃料補助金の半分ほどにとどまった。
しかし、財政赤字の拡大をうけ、2016年に、資力調査に基づく制度に転換。
これにより受給者数は半減すると予想されている、と。

2)人道援助手段としての現金給付

次は、自然災害や人為的災害の被災者や難民支援のための現金給付のケースの近年における増加について取り上げている。
ただ事例の多くは、そこで現金給付が行われていれば、というタラレバ論。
2004年のインド洋大津波被災、2003年のイラク戦争後のイランの混乱、2001年のアメリカのアフガニスタン攻撃後の対応等が現金給付で行われていれば、というものである。
このタラレバは、国連・世界食糧計画による4ヶ国での食料現物給付と現金給付の効果比較、100万人以上のシリア難民が暮らすレバノンにおける国連難民高等弁務官事務所による「越冬対策資金」配布結果の効果比較などに基づくものである。

3)紛争回避の手段としての現金給付

もう一つが、紛争回避手段としてというものだが、これは天然資源の利権の占有・独占等をめぐる紛争という人間の欲得がらみの問題の解決方法として、現金等を分かち合う、いわば直接配当型の給付についてである。
具体的事例として挙げているのが、「オランダ病」(または「資源の罠」)と呼ばれる、1960年代オランダでの天然ガス輸出で潤った結果・連鎖で、国内製造業が壊滅的打撃を受けたのだが、この資源収入を現金給付として利用することである。
翻訳上適切な用語がなかったためか、諸にこの意味での利用なのか分からないが、適切性を欠く事例紹介ではなかったかと思う。

本章の最後に、近年ベーシックインカムの導入機運が高まっていることを提示。
・2016年メキシコシティの市政府が、ベーシックインカム導入を盛り込んだ市憲章を起草
・これに先立ち、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会が域内各国にBIの採用検討を勧告
・2017年1月インド、ジャム・カシミール州財務相がBIの段階的導入方針発表
・2017年インド中央政府定例経済報告でBIの是非を論じ、直後財務相が1年以内の試験プロジェクト開始の意向

こうした傾向は、豊かな国より途上国のほうがBIを導入しやすい、既存制度からの移行コストが少なくて済むことなどが要因ではないかと。
先進国は一部の人だけを対象とする給付制度が、何十種類・何百種類も複雑に絡み合っているのだ。
そして、途上国においては補助金制度の解体が困難で、現金給付への移行は簡単ではないことを繰り返すが、イランなどにみるように、現金給付への転換そしてベーシックインカム採用が、開発戦略の主流として認められ始めていると括っている。



ここまで詳しく論じる予定ではなかったのですが、あまりにも中途半端ではまずいと思い、ほぼ構成に従って見てきました。
途上国における現金給付とそこから連想されるベーシックインカム政策との親近性、親和性が、ガイ氏が本章を設けた背景にあると推察・推論します。
その気持ち、意義は分からなくもないですが、歴史的に救貧に発した社会福祉や社会保障制度の先行モデルを導入・運用管理してきた先進国におけるベーシックインカムの実現をより早めるための方法論や理論の方に、より注力・優先すべきではないか。
これが、ガイ氏に対する率直な思いです。
途上国のほうが実現の可能性が高い、としていますが、あくまでも感覚的な捉え方であり、国際機関の要請・推奨が後押しするかのようですが、それらの国々の多くに共通なのが、国情や政情が不安定であることです。
そうした途上国レベルでは、貧困政策が最も重要で、かつアプローチしやすい課題と勝手に判断していると思わずにはおれません。
そうした国々でベーシックインカムが先行して導入されれば、先進国も追随せざるをえない。
こんな穿った見方さえしてしまいそうになります。
本筋としては、先進国がベーシックインカム導入のお手本を見せ、その導入ステップのモデルを途上国に提供するというのが望ましいあり方でしょう。
貧困政策の先も見据え、社会的経済的基盤の拡充・整備、そして開発をも現実的に構想・発想しうるベーシックインカム・モデル。
それなしに、途上国のベーシックインカム導入を何かしらの代弁・代言・代行をするかのように振る舞うことには賛成できない。
そういう意味からも、日本独自のベーシックインカム、ベーキック・ペンション生活基礎年金制度の考察・提案を継続していきます。

残すところあと2回となった次回第12回は、第11章 推進運動と試験プロジェクト及び「付録 試験プロジェクトの進め方」を取り上げます。

今回は第12回、「第11章 推進運動と試験プロジェクト」「付録 試験プロジェクトの進め方」を取り上げます。

・ベーシックインカム世界ネットワーク(BIEN)
・2016年のスイス国民投票
・ユニバーサル・ベーシックインカム・ヨーロッパ(UBIE)
・過去の試験プロジェクト
  マニトバ州ドーフィン(カナダ)の実験
  アメリカのチェロキー族 ー 偶然の実験
  ナミビアとインドの試験プロジェクト
・進行中もしくは計画中のプロジェクト
  フィンランド社会保険庁
  オランダの地方自治体
  カナダのオンタリオ州
  Yコンビネーター
  ギブ・ダイレクトリー(ケニア)
  クラウドファンディング/
  その他の計画
・効果は継続するか?
・結論


 ベーシックインカム導入に向けての推進活動の代表的事例と、過去の及び現在進められつつある試験プロジェクト事例の紹介を目的とした上記の構成の本章を、ほぼその展開に従って整理していきます。

 本章の初めは、ベーシックインカム導入に向けての推進活動の主体となった団体とその活動、及び、推進活動が国民投票という形に現れたスイスにおける事例を取り上げています。

1)ベーシックインカム世界ネットワーク(BIEN)とその活動

・1986年9月、ベルギー・ルーバンラヌーブで「ベーシックインカム世界ネットワーク BIEN(旧称ベーシックインカム欧州ネットワーク)」正式発足。
・「社会のすべての人が権利としてベーシックインカムを受け取るべきである」と主張・提案
・メンバーの会費で運営され、1986年第1回ベルギー・アントワープ以降隔年で世界会議を開催。
・フィレンツェ、ロンドン、パリ、アムステルダム、ウィーン、ベルリン、ジュネーブ、バルセロナ、(以降欧州外・欧州交互に開催)ケープタウン、ダブリン。サンパウロ、ミュンヘン、モントリオール、ソウル(2016年)、リスボン(2017年)、タンペレ(フィンランド・2018年)開催。
・世界各国でBI導入に向けた活動に取り組み、参加団体は34団体(日本も含む。山森亮氏代表)
・多言語版ニュースレターによりさまざまな国の状況を報告。現在はオンライン版「ベーシックインカム・ニューズ」。他査読式専門誌「ベーシックインカム・スタディーズ」発行

2)ユニバーサル・ベーシックインカム・ヨーロッパ(UBIE)とその活動

・多くがBIENメンバーのBI推進派が、2014年EUでBIの「住民提案」実現をめざす署名活動開始
・100万人以上の署名が集まれば、欧州委員会がBIの実現可能性についての調査が義務付け。
 結果30万人超にとどまったが、次回の署名活動の基盤形成がなされることに。
・この運動の中心になってきたのが「ユニバーサル・ベーシックインカム・ヨーロッパ UBIE。
・UBIEとBIENがここ10年ほど年1回「ベーシックインカム・ウィーク」を共同開催し、BI議論の活性化、推進運動・啓蒙活動を展開

 世界的に注目されたスイスにおけるBI導入の是非をめぐる国民投票。その結果は否定された。
 しかし、資金も組織もない数人の推進はの活動から始まったにすぎないが、高い関心を集め、国民投票実施に必要な1年以内の10万人以上の署名獲得条件に対して、14万1000人分を集めて実現し、導入機運が一時的にでも高まったことは否定しようがない。
 その活動方法、パフォーマンスは賛否が相半ばしたが、BIの具体的な給付額とその決定方法や導入方法上、反対派に攻撃材料を与える不備・不具合をきたしたことから、投票率44.4%、賛成23%にとどまり、否認された。
 流布された月額2500スイスフランという給付金額の財源面での不安、実施後の移民流入不安、AIによる雇用不安などが反対派により煽られたこと、都市部重視型の運動等も要因に挙げられている。
しかし、この第1回目の国民投票実施・実現が、次回の可能性、中期的な見通しの明るさを示すことになったと前向きに捉えられていることが強調されている。

(参考)
⇒ ベーシック・インカム世界ネットワーク(BIEN)の位置付け(2021/3/22)


次は、主だった過去のベーシックインカムの試験プロジェクト及び進行中・計画中のプロジェクトの紹介です。
各試験例をやや事務的に、簡潔に整理していきます。

1)マニトバ州ドーフィン(カナダ)の実験

・普遍主義の中でのターゲティングとも評される「マニトバ・ベーシック・アニュアル・インカム実験」(MINCOME)の一環として同州で行われた実験プログラムだが、実態は「負の所得税」
・1975年~77年に党政権下で実施。保守党政権誕生で打ち切りになり、分析せぬまま放置。40年後調査資料発掘後一部データ分析実施
・誰でも登録可能で、世帯所得が一定基準を下回れば、理由のいかんを問わず受給資格。
・労働がまったくない人には満額(世帯所得の中央値の半額をわずかに下回る金額を給付。
・1カナダドルの所得があるごとに給付額が50セントずつ減額され、3万9000カナダドル(中央値にほぼ相当)に達すると給付は打ち切り
・3年の期間中、ドーフィンの人口の約5人に1人、2000人以上が受給。
・高校中退率の減少、入院件数・事故や負傷件数・深刻な精神疾患件数が減少。
・」フルタイム労働者の労働時間にほぼ変動はなく、幼児を持つ母親や通学の子どもたちの有給の労働従事時間が減少
・MINCOME受給者に恥辱感はなく、既存の福祉受給者に比して、活発に行動

2)アメリカのチェロキー族 ー 偶然の実験

・1993年アメリカ・デューク大学研究チームによる「グレート・スモーキー山脈ユース研究」プロジェクトにおいて、低所得世帯の学齢期の子ども1420人の精神の健康状態調査を開始
・4年後1997年、アメリカ先住民の東部チェロキー族が保留地でカジノ経営を開始し、毎年利益の半分をすべての部族に均等に分配することを部族リーダーが決定。
・事実上のBIともいえる、調査期間中の分配金が1人当り年間約4000ドル。世帯所得は平均1.2倍に増加(子ども分は別に、18歳になるまで銀行貯蓄)
・10年間の調査期間、この部族の子どもたちと分配金を受け取らない他地域の子どもたちを比較
・受け取った子どもたちに、両親の関係の改善もあり、学業、少年犯罪比率、行動障害・情緒障害、勤勉性・協調性等の各方面で有効・有益な好影響がみられた。

3)ナミビアとインドの試験プロジェクト

 この2つの試験プロジェクトについては、前回の以下の記事
途上国のベーシックインカム推奨よりも優先すべき問題先進国BI:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-11(2022/12/14)
の中の<真のベーシックインカム実験とされる2例紹介:だが短期間にとどまる>と題した項で紹介。
 本章でガイ氏は再度、その評価として、短期間という制約でのプロジェクトではあったが、本物のBIに最も近づけたものとし、質的データと量的データの組み合わせで、コミュニティ全体、すなわち、個人・世帯・コミュニティレベルでの効果を明らかにしたと賛辞を送っている。

1)フィンランド社会保険庁

・2015年就任同国ユハ・シピラ首相が「実験的統治」の一環としてBIの試験プロジェクト実施方針を発表(予算約2000万ユーロ)
・2016年3月同プロジェクトを担う同国社会保険庁(KELA)が同実験を社会保障制度改革の一つとして、参加型でインセンティブ重視、官僚機構縮小、複雑な給付制度の簡素化により、財政面での持続可能性を高めると方針化し、さまざまな選択肢と法律上の課題をまとめた文書を発表。
・しかしその中で、多額の金がかかりすぎるとして、BI制度は、直ちに選択肢から除外
・2017年1月以降失業給付受給の25~57歳から無作為抽出の2000人に、月額560ユーロ(米ドル換算約620ドル相当)給付(非課税)し、2年間行動や状況を観察。別の失業者2000人と比較。就労しても給付は打ち切りとならない。
・結果、完全なBI放棄により、無条件給付が就労意欲に及ぼす影響を検証するだけの実験に。
この状況についてガイ氏は、BIは、社会工学=国家が好ましいと考える行動を人々に取らせるための手段であってはならないと。
現状BI実験のために確保された資金の大半は使用されず蓄えられており、いずれ行われるであろう大規模試験プロジェクトに、適切に用いられることを期待するとしている。

2)オランダの地方自治体

・2015年、新法「参加法」制定により、福祉受給者に求められる「ワークフェア」の内容が厳格化
 同時に、社会的扶助の提供を行なう自治体にボランティア活動やケア活動への従事など、独自の給付条件を定める権限を付与
・2016年後半まで、これを受けて、ユトレヒト、フローニンゲン、ティルブルク、ワーゲニンゲンなど多数の自治体がBI実験を計画化
・しかし、中央政府の承認が必要であり、連立政権第1党右派自由民主国民党が一貫して反対。
 2016年9月、25自治体合計約2万2000人の福祉申請者限定で、2017年1月から2年間の試験プロジェクトを、厳しい制約を付して承認。結果多くの自治体が実施を見送り。
・対象者を6グループに分け、①通常の給付(単身者973ユーロ、既婚カップル1390ユーロ)かつ職探しせずとも制裁なし ②「労働市場への再統合」目的に、既存福祉制度よりも多くの義務を課し、監視 ③給付金以外の所得があれば、その50%のみ手元に残すことが可能(但し上限あり) ④以上の3つの混合型 ⑤比較グループで対象自治体の住民で既存福祉制度適用 ⑥比較グループでそれ以外の自治体住民で既存福祉制度適用。6グループいずれも参加は強制されないが、一旦参加後はどのグループに入れられるか不明であり、かつ離脱不可
とまあ、神経を疑うようなことを平気でやったわけで、紹介するも恥、というもの。

3)カナダのオンタリオ州

■ 世界初のベーシックインカム導入国の最有力候補と予想されたカナダ
・1971年、上院の委員会が「最低所得保証」(具体的には負の所得税)の導入を勧告
・1985年、王立委員会(マクドナルド委員会)が同様の勧告
・2015~16年、アルバータ、ブリティッシュ・コロンビア、プリンス・エドワード島、ケベック他の各州の政治家がBIの実験に関心を示す
・2016年総選挙で勝利した自由党が、党大会で最低所得保証支持の動議を可決
■ オンタリオ州の動向
・3年間のプロジェクト実施のために州政府が2500万カナダドルの予算を確保
・所得支援をより効率的に実行できるようになり、広がる州民の健康・雇用・住宅状況も改善するという主張の真偽を検証することを目的とする。
・2016年後半、推進派シーガル上院議員の試案をベースに、具体的な制度設計に関する議論のたたき台となる文書を作成
・次の3案を実験①既存の主要福祉給付、「オンタリオ・ワークス」「オンタリオ障がい支援プログラム」に代えてBI導入 ②同様、BIではなく、負の所得税を導入 ③所得の有無や多寡を問わず、18~64歳の勤労年齢者のすべてに給付(但し、最低1年以上居住者に限定)
・他に給付水準2種類、勤労所得がある場合の給付削減率2種類実験。ランダム比較試験に加え、「飽和実験地区」3ヶ所設置し、コミュニティ規模の効果を検証
・当設計に対して過度な複雑化を招くリスク、所得が一定レベルより下の人限定、子どもと高齢者が除外などの問題・欠点をガイ氏は指摘(カナダでは子どもの5人に1人は貧困状態)
・しかし、(本書執筆時点で)最も期待できる実験と評価。シーガル議員提案では、すべての人に(州の貧困ラインの約75%)月額1320カナダドル、障がい者には500カナダドル上乗せし3年間給付

4)Yコンビネーター

・2016年、シリコンバレーのスタートアップ「Yコンビネーター」が、カリフォルニアオークランドでBIの小規模試験プロジェクト実施計画発表
・当初2000万ドル資金準備し、他に寄付を募る
・AIの進化により旧来の雇用が消滅し、不平等拡大の可能性という想定から、BI保証時に人々がどのような行動を取るかに関心
・2016年9月、運用面・設計面の問題点調査のため「プレ試験」開始
・あるコミュニティの住民全員を対象とし、すべての成人に2~3年間給付を行なう2つの試験プロジェクト実施を予定
・試験期間中の情報公開は行わない

5)ギブ・ダイレクトリー(ケニア)

・カリフォルニア州拠点の「極度の貧困」の根絶を目標とする慈善団体「ギブ・ダイレクトリー」の東アフリカでの活動
・クラウドファンディングによる資金で、低所得者への一回限りの大規模給付金配布、無条件の毎月の現金給付など実施。低所得者・貧困者向けの種々の実験プログラムと同様の結果
・(本書執筆時点)3000万ドルかけて、ケニアの2地区で3種類の給付を行なう、過去最大規模の実験を計画
・①40村のすべての成人住民に12年間毎月 ②80村のすべての成人住民に2年間毎月 ③他の80村のすべての成人住民に2年分のBI相当の一時金を支給
・合算すると、約2万6000人が、米ドル換算1日当り75セント受け取り。
・比較グループとして、他の点で似たような100村のデータを収集

6)クラウドファンディング及びその利用による試験事例

この他クラウドファンディングの活用によるBI試験例として、以下も挙げています。
・ベルギー慈善団体「エイト」による2017年1月ウガンダでの小規模実験:同国西部フォートポータル地区の村約50世帯の全住民に米ドル換算月額18ドル2年間給付
・インド非営利団体「キャッシュリリーフ」の実験計画:ある貧しい村のすべての住民に2年間BI提供
・ブラジル非営利団体「へシビタス研究所」:①2008年~14年まで、民間寄付金基盤にサンパウロ州貧村クアチンガ・ヴェーリョの住民100人に米ドル換算月約9ドルのBI給付。②2016年1月個人単位で終身のBI給付の「ベーシックインカム・スタートアップ」プロジェクト発足。寄付1000ドル集まるごとに給付対象者を一人ずつ増やす
⇒ 2004年ブラジルベーシックインカム導入の法制化する法律に当時の大統領が署名
・ドイツ2014年設立「マイン・グルントインコメン」

7)その他の計画

・イギリス:2016年9月ジェレミー・コービン労働党党首再戦後同党影の財務相ジョン・マクドネルが党政策としてBI導入表明と試験プロジェクト実施提案
・スコットランド:自治政府与党スコットランド民族党(SNP)が党大会でBI支持動議可決。グラスゴーとファイフの市議会が市レベルでの試験プロジェクトを議論
・ニュージーランド:野党労働党が試験プロジェクト実施支持
・アメリカ:①ワシントンDC議会が市内でのプロジェクト実施要求の動議採択。サンフランシスコ市も調査を開始。②自治体・州・国レベルの取り組み支援のための政治活動委員会「ベーシックインカム全国運動(NCBI)」設立 ③2016年12月、起業家・研究者・活動家等グループが「経済セキュリティー・プロジェクト」を発足、BIを「概念レベルの議論から実りある行動へ」移行を目指す
・台湾:新政党・台湾共和党(現・基本福利党)がBI推進を訴え
・韓国:2017年大統領選名乗りを上げた李・在明ほか数人の有力リベラル派政治家がBI支持。
・アイスランド:2016年10月総選挙で第3党に躍進の海賊党がプロジェクト実施支持
・ドイツ:海賊党がBI支持。2016年9月無条件のBI導入の単一政策掲げた新党「ベーシックインカム連盟」発足
・スイス:2016年4月ローザンヌ市議会、プロジェクト実施を市政府に求める動議可決
・フランス:元老院がプロジェクト実施勧告。アクテーヌ地方で実験に向けた動き
・イタリア:2016年後半反既成政治掲げる新党「五つ星運動」が市政を担う港湾都市リボルノで小規模実験開始。市の最貧層から100世帯選び無条件で500ユーロ給付。同党が政権を担うラグーザ(シチリア島)、ナポリでも同様の実験を計画

と、以上、ベーシックインカムの教科書的書と位置付けていることもあり、極力細かい動向・情報もピックアップして、メモ書きしてきました。
お気づきと思いますが、ここには日本の実情・動向についてはなぜかまったく触れられていません。
当サイト及びその基盤となったWEBサイト https:2050society.com では、これまで日本で発売された多数のBI書を紹介し、その内容について取り上げてきています。
また、政党の動きとして、2020年以降の国政選挙時に予野党数党から掲げられたベーシックインカムに関連する公約等について以下の記事で取り上げています。
お時間がありましたら、チェック頂ければと思います。

れいわ新選組のベーシックインカム方針:デフレ脱却給付金という部分的BI(2021/4/4)
立憲民主党のベーシックインカム方針:ベーシックサービス志向の本気度と曖昧性に疑問(2021/4/6)
日本維新の会のベーシックインカム方針:本気で考えているとすれば稚拙で危うい曖昧BI(2021/4/26)
ベーシックインカムでなく ベーシックサービスへ傾斜する公明党(2021/4/28)
国民民主党の日本版ベーシック・インカム構想は、中道政策というより中途半端政策:給付付き税額控除方式と
真のベーシックインカム実現を政策とする政党ゼロから取り組むべき現状と今後(2021/7/16)
維新の会ベーシックインカム案は全政党中ベストの社会保障制度改革案 (2021/10/21)
期日前投票済ませた翌日の日本維新の会と国民民主党の折込み広告から:維新ベーシックインカムと国民民主日本型ベーシックインカムの大きな違い(2021/10/23)
衆議院選挙とベーシックインカムとバラマキ政策・公約(2021/10/31)
日本維新の会ベーシックインカム政策への懸念(2021/11/20)


話は本論に戻ります。
ベーシックインカム試験プロジェクトの主な目的。
それは、人々の行動に及ぼす好影響と悪影響の検証と、現実的政策であるか否かを実証すること。
こうガイ氏。
そして、こう続ける。
実験という性格上、どうしても短期間のものとなり、恒久化した場合その結果は変わらないか、終了した場合効果が消滅したり、覆されたりしないかという2つの疑問がある、とも。
当然、これらに答える実証的データは望むべくもないのだが、ガイ氏は、インドでのプロジェクトのフォロー結果を引き合いに出しながら、比較的楽天的に考えている。
好影響が長期間持続すると期待できるなら、無作為に選んだ対象地域を次々と変えていき、すべての地域で給付が行われるまで続ければよく、少なくとも財政面でのハードルは下がる、と。
そして、いくつかの批判・反論例を示すと、そこまで求めるのは、要求が厳しすぎる、とも。
なんとも無邪気な発想であり、結論だろうか。

そして本章をこう結論づける。

確かに、ベーシックインカムを導入すべきかは、人々の目に見える行動を実証的に調べた結果に従って判断すべきものではない。(略)
理想を言えば、試験プロジェクトは、慈善団体が実施主体になったり、現実離れした非公式のデジタル通貨で給付したりするのではなく、国家や地方政府が本物の現金を給付する形で行なうことが望ましい。(略)
試験的プロジェクトの実施に向けて、いま本当に足りないのは政治的意思だけだ。
現状は、試験プロジェクトが実施され始めたばかりの流動的段階だ。(略)
適切な実験であるためには、本来のベーシックインカムの定義に沿った仕組みが試される必要がある。(略)
試験プロジェクトは、人々の行動を調べ、どのような措置をあわせて導入すべきかを明らかにすると同時に、自由と社会正義と経済的な安全を向上させることを目的とすべきだ。
自由を損ない、社会正義と経済的な安全を踏みにじるような安全の原則を踏みにじるような試みは、拒絶しなくてはならない。


試験プロジェクトは実施され始めたばかりで流動的段階というが、果たしてそうだろうか。
これ以降種々試みられても、さほど異なる結果が示されるとは考えられないくらい、相当のプロジェクトが試みられてきたとみてよいと思う。
行われていないのは、付録で示されたような、多様な要素・条件を包摂した、大規模で、より継続的な、国家や地方自治体による公的プロジェクトであろう。
加えて、ガイ氏が求める自由、社会正義、そして経済的安全を向上させるものとしては、他の社会保障制度や社会システム、経済・財政上の基盤や条件がある程度整備されていることが不可欠だろう。
そうした深掘りを回避しての楽観論は、示した理想論の空虚さを募らせるばかりである。
また、本当に足りないのは政治的意思だけだともいうが、それが試験的プロジェクトにとどまるものということでは、まったく話にもならない。
いずれにしても、極めて残念なことである。

当サイトの種々の記事で、さまざまなベーシックインカム書等を参考にして、実験例などを紹介してきています。
特に、昨年3月上旬に、実験導入事例紹介を2冊の書を参考に行いました。
1冊目は、波頭亮氏著AIとBIはいかに人間を変えるのか 』(2018/2/28刊)を用いて編集した以下の記事及び紹介リスト。

カナダオンタリオ州ミンカム等ベーシックインカム、実験導入事例紹介-1(2021/3/6)

1)カナダ・マニトバ州施行のミンカムの実験(1974年)
2)フィンランドの試験的BI(2017年1月~2018年12月)
3)オランダ、ユトレヒト市のBI試験導入(2016年1月~)
4)スイスのBI国民投票、否決(2016年)
5)カナダ、オンタリオ州BI導入実験(2017年~)
6)イギリス・ロンドンで、ホームレスへの現金支給社会実験(2009年)
7)アメリカ、ベンチャーキャピタル「Yコンビネータ」による実験(2016年~)
8)NY拠点のNGO「ギブ・ディレクトリ」によるケニアでの実験(2016年10月~)

2冊目は、井上智洋氏共著『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(2021/1/21刊)を参考にしての以下の記事及び紹介事例です。
BI実験と効果誘導に必要な認識:ベーシックインカム、実験導入事例紹介-2(2021/3/7)

9)アメリカ、アラスカ州「アラスカ・パーマネント・ファンド」(1982年~)
10)アメリカ、ハワイ州「ベーシックインカム州法」2017年成立
11)アメリカ、全米11都市の市長によるベーシックインカム導入実験宣言
12)イタリア(2018年~)
13)スペイン(2020年~)
14)ブラジル(2003年~)
15)ナミビア(2008~2009年)
16)イラン(2010年~)
17)韓国、京畿道行政区の「青年配当」(2019年4月~)
18)韓国、ソウル市の「若者手当」(2019年4月~)
19)日本、「特別定額給付金」支給(2020年)

こうした多数の先行事例が、繰り返し、種々のBI論で紹介・披瀝されても、BI実現にどれほどの影響を与えることができるか。
特に政治・行政課題としてのあり方が、実現に直接的に関係するだけに、世界各国の状況が気になるところですが、勧告や決議などの言葉が取り沙汰される割には、決め手となる状況等の情報は伝わってきません。
果たして最終章の「第12章 政治的課題と実現への道」でどのように提案・提起するのか、気になるところです。

本章とは別に、最終章を終えた後、「試験プロジェクトの進め方」という付録が添えられ、以下の項目にそれぞれ若干の説明が加えられています。

1)ベーシックインカムとして適切な給付である
2)実験の設計が明確で、持続可能である
3)設計が常に一定である
4)それなりの規模でおこなう
5)それなりの期間にわたり実験をおこなう
6)複製可能で拡張可能である
7)無作為抽出した比較グループを用いる
8)ベースライン調査を実施する
9)評価調査を定期的におこなう
10)有力な情報提供者を活用する
11)多層的な効果を測る実験である
12)検証したい仮説を実験開始前にはっきりさせる
13)コストの計算と予算の計画が現実的である
14)サンプルをできるだけ変えない
15)現金給付の仕組みを監視する
16)人々の自己決定権の要素も検討する


ここまで配慮されれば、もう実験の域を超えて、本番、真のベーシックインカムの導入が可能の状態にあると思ってよいのではと。
単純にいえば、実験そのものが平等性を欠くゆえに反対、というのが私の立場です。
また、あまりに対象を単純化したものでは、むしろ現実性に乏しいものになってしまうゆえでもあります。
しかし、上記の各項目そして全条件を読めば読むほど、相当の規模、かつ多様な観点からの試験・分析を必要とするゆえ、結局複雑で大がかりな、そして馬鹿にならないコストも必要となる実験プログラム、実験プロジェクトになるに違いありません。
なにより、コストの捻出・拠出方法が、国費や自治体負担経費ではないことがほとんどでは、本気度がそこそこにとどまることを示すわけで、調査分析ネタを増やすだけに終わるか、反対理由のこじつけに使われることが想像できるとさえ思ってしまいます。
ですので、乱暴ですが、この付録の各項目の説明はここでは省略させて頂きます。

いくら望ましい試験プロジェクトを何度も重ねても、あくまでも実験は実験。
結局期限付きの実験では、受給者の生活の変化は、給付が継続されることを想定してのものでなく、期限がくれば終わるという認識でのものにとどまることも当然で、それ自体実験の制約・限界を示しています。
調査分析課題を持って臨むのは当然として、中途半端であること、何かしらの独善性を持つことは免れることはできず、事前でも事後でも何かにつけて、反論のネタを提供することに終わってしまうのではとも思っています。

従い、ベーシックインカムは、すべての人に生涯支給されるという大前提のもと、他の社会保障・福祉制度などとの関連を考慮し、実験・試験ではなく、承認された制度として、段階的に導入し、問題点があれば修正・調整を加え、次のステップに進める。
そのプロセス設計にも同意を得た上で、完成計ベーシックインカムの実現・達成をめざすべきと考えます。

ベーシック・ペンションもそうした方針・方向・方策に基づき、段階的に導入し、そのフォローを適切に行いながら、2050年までには完成しているというプロセスを描き、提案していきます。
本年度の提案は、以下の記事に示していますが、来年2023年版の提案は、1月から始める予定です。

<第1回>:ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)
<第2回>:少子化・高齢化社会対策優先でベーシック・ペンション実現へ:2022年ベーシック・ペンション案-2(2022/2/17)
<第3回>:マイナポイントでベーシック・ペンション暫定支給時の管理運用方法と発行額:2022年ベーシック・ペンション案-3(2022/2/18)
<第4回>:困窮者生活保護制度から全国民生活保障制度ベーシック・ペンションへ:2022年ベーシック・ペンション案-4(2022/2/19)

いよいよというか、ようやくというべきか、次回は最終回第13回。
本書最終章である「第12章 政治的課題と実現への道」を取り上げ、簡単な総括を加えます。

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